社会医療法人は、医療法人のうち、救急医療やへき地医療など地域に必要な医療を担うものとして都道府県知事の認定を受けた法人です。一般の医療法人との違いは、公益性の高い運営を求められる代わりに、医療保健業の法人税が非課税になり、収益業務もできる点にあります。
外来中心のクリニックが社会医療法人を目指すことは、要件の上でほぼありません。それでも違いを知っておくと、法人化や持分なし医療法人への移行を考えるときに、どこまでの公益性を引き受けるかを判断する材料になります。この記事では、医療法と厚生労働省の通知をもとに、認定要件と税制の違いを整理し、どの法人がどちらを選ぶかの境界線を示します。
クラウド型電子カルテ「CLIUS」
クラウド型電子カルテ「CLIUS」は、予約・問診・オンライン診療・経営分析まで一元化できる機能を備えています。効率化を徹底追求し、直感的にサクサク操作できる「圧倒的な使いやすさ」が、カルテ入力業務のストレスから解放します。
詳しい内容を知りたい方は下記フォームからお問い合わせください。
社会医療法人と医療法人の違いを一覧で比べる
| 項目 | 一般の医療法人 | 社会医療法人 |
|---|---|---|
| 根拠 | 医療法第39条・第44条(都道府県知事の認可で設立) | 医療法第42条の2(医療法人のうち、知事の認定を受けたもの) |
| 同族の役員・社員 | 制限なし | 各役員・社員(評議員)とその親族等が総数の3分の1以下 |
| 求められる事業 | 病院・診療所等の開設(附帯業務は可) | 救急医療等確保事業を、基準を満たして実施 |
| 収益業務 | できない | 厚生労働大臣が定める業務を行える |
| 法人税 | 普通法人として課税 | 医療保健業などの本来業務は非課税 |
| 解散時の残余財産 | 持分なし法人は国・地方公共団体等に帰属 | 国・地方公共団体・他の社会医療法人に帰属させる定めが必要 |
| 資金調達 | 借入れ、基金など | 社会医療法人債を発行できる |
社会医療法人は新しい種類の法人を作るのではなく、既存の医療法人が要件を満たして認定を受ける仕組みです。
社会医療法人の認定要件は同族・事業・公的な運営の3つ
同族関係者の割合が3分の1以下
役員(理事・監事)、社団の社員、財団の評議員のそれぞれについて、各人とその配偶者、三親等以内の親族、事実上の婚姻関係にある者などの数が、総数の3分の1を超えてはいけません(医療法第42条の2第1項第1号から第3号)。院長の家族で理事会を固めている医療法人は、この要件だけで認定の対象外になります。
救急医療等確保事業を基準どおりに行っている
開設する病院または診療所の1つ以上が、所在地の都道府県の医療計画に記載された「救急医療等確保事業」を行っていることが要件です。対象の事業は次のとおりです。
- 救急医療
- 災害時における医療
- へき地の医療
- 周産期医療
- 小児医療(小児救急医療を含む)
- 新興感染症の発生・まん延時における医療(2024年4月から追加)
事業ごとに、構造設備、体制、実績の基準が告示で定められています。たとえば救急医療では、医療計画に救急医療の提供施設として名前が載っていることに加え、直近3会計年度で次のどちらかの実績が求められます。
| 実績基準 | 内容 |
|---|---|
| 時間外等加算割合 | 初診料の算定件数のうち、時間外・休日・深夜加算の件数が20%以上 |
| 夜間等救急自動車等搬送件数 | 夜間・休日の救急車等の受け入れが年平均750件以上 |
この基準は認定のときだけでなく、認定後も満たし続ける必要があります。医師が退職して救急体制を保てなくなると、認定の取り消しにつながります。
公的な運営と、社会保険診療80%超
医療法施行規則で、公的な運営に関する要件が細かく決められています。主なものは次のとおりです。
- 理事6名以上、監事2名以上
- 役員報酬の支給基準を定め、不当に高額にしない
- 役員や社員など関係者に特別の利益を与えない
- 社会保険診療、労災保険診療、健康診査などの収入の合計が、全収入の80%を超える
- 自費患者に請求する金額を、社会保険診療報酬と同じ基準で計算する
- 医療診療の収入が、医師・看護師等の給与など患者のために直接必要な経費の150%以内
- 遊休財産額が、本来業務の事業費用を超えない
自費診療の割合が高いクリニックは、社会保険診療80%超の要件と、自費も保険と同じ基準で請求する要件の2つで外れます。
社会医療法人と医療法人の税制の違い
厚生労働省の資料では、社会医療法人の税制上の扱いを次のように整理しています。
| 税目 | 社会医療法人の扱い |
|---|---|
| 法人税 | 病院・診療所・介護老人保健施設から生じる本来業務の医療保健業は非課税。収益業務は課税 |
| 不動産取得税・固定資産税・都市計画税 | 直接救急医療等確保事業の用に供する固定資産は非課税 |
一般の医療法人は普通法人として法人税の課税対象です。国税庁長官の承認を受けて軽減税率が適用される「特定医療法人」という別の制度もあり、社会医療法人とは要件も手続きも異なります。
税制の優遇は大きい一方で、認定を取り消されると、それまで非課税だった分に課税が及ぶ仕組みがあります。救急医療等確保事業の実績要件だけを、法人の責めに帰さない事由で満たせなくなった場合は、事業の継続計画について知事の認定を受け、収益業務を続けられる道が医療法第42条の3で用意されています。認定の取り消しと課税の影響は、税理士と個別に確認してください。
クラウド型電子カルテ「CLIUS」
クラウド型電子カルテ「CLIUS」は、予約・問診・オンライン診療・経営分析まで一元化できる機能を備えています。効率化を徹底追求し、直感的にサクサク操作できる「圧倒的な使いやすさ」が、カルテ入力業務のストレスから解放します。
詳しい内容を知りたい方は下記フォームからお問い合わせください。
社会医療法人を目指す法人/一般の医療法人でよい法人/個人開業でよいクリニックの境界線
| 選択 | 向いている条件 |
|---|---|
| 社会医療法人を目指す | 救急告示病院などで、医療計画に救急医療等確保事業の施設として名前が載っている/同族の役員・社員を3分の1以下にできる/持分を放棄し残余財産を公的な帰属先にできる/保険診療の割合が80%を大きく超えている |
| 一般の医療法人のままでよい | 外来中心の診療所で、救急医療等確保事業の実績基準に届かない/親族で理事会を構成して経営を続けたい/自費診療の比率が高い/分院展開や事業承継のために法人格は必要 |
| 個人開業のままでよい | 分院を出す予定がない/所得が法人化の手間を上回るほど大きくない/事業承継の方針がまだ決まっていない |
都道府県が公表している認定状況を見ると、認定を受けているのは救急医療や精神科救急医療を担う病院を持つ法人が中心です。兵庫県の一覧には、へき地医療を担う診療所が認定対象の医療機関として並んでいる例もありますが、その法人は病院も併せ持っています。診療所だけの医療法人が社会医療法人を目指す場面は限られます。
クリニックにとって現実的な論点は、社会医療法人かどうかより、個人開業から医療法人へ移るか、持分ありから持分なしへ移るかのほうです。医療法人化の判断は「医療法人化のメリット・デメリット」、法人の種類は「医療法人と医療法人社団の違いとは?」、持分の扱いは「持分なしの医療法人への移行方法」で整理しています。
社会医療法人の認定を受けるまでの流れ
- 定款(寄附行為)を、同族要件・理事会・残余財産の帰属先などの要件に合わせて変更する
- 救急医療等確保事業の実績を、直近3会計年度分そろえる
- 都道府県知事に認定を申請する
- 知事が都道府県医療審議会の意見を聴いて認定する
認定後も、毎会計年度の決算の届出とあわせて、要件を満たし続けているかを都道府県に示す必要があります。収益業務の会計は、本来業務と分けて特別の会計として経理しなければなりません。
よくある質問
社会医療法人と医療法人社団は何が違うのか
医療法人社団は、人の集まり(社員)を基礎にした医療法人の形態で、財団と対になる分類です。社会医療法人は、社団・財団のどちらの医療法人でも、要件を満たせば認定を受けられる区分です。「社会医療法人社団」は、社団の医療法人が社会医療法人の認定を受けたものを指します。
社会医療法人になると理事長を親族に継がせられないのか
理事長の選任自体は禁じられていません。ただし役員の3分の1超を同族で占めることはできないため、理事会の多数は親族以外になります。親族内での承継を法人の意思決定ごと続けたいなら、一般の医療法人のほうが合っています。
社会医療法人の収益業務では何ができるのか
厚生労働大臣が定める業務に限られ、その収益は開設する病院・診療所などの経営に充てることが目的とされています。本来業務に支障のない範囲で行い、会計は本来業務と区分します。
クラウド型電子カルテ「CLIUS」
クラウド型電子カルテ「CLIUS」は、予約・問診・オンライン診療・経営分析まで一元化できる機能を備えています。効率化を徹底追求し、直感的にサクサク操作できる「圧倒的な使いやすさ」が、カルテ入力業務のストレスから解放します。
詳しい内容を知りたい方は下記フォームからお問い合わせください。
まとめ
社会医療法人は、同族要件、救急医療等確保事業の実施と実績、公的な運営の要件を満たした医療法人が知事の認定を受けるもので、医療保健業の法人税が非課税になり、収益業務や社会医療法人債も使えます。その代わり、同族経営や自費中心の経営とは両立しにくい設計です。
外来中心のクリニックでは、社会医療法人より、医療法人化と持分なしへの移行のほうが検討の中心になります。自院の保険診療の割合や役員構成を一度数字で確かめておくと、どの形が合うかの判断が早くなります。
参考
- 医療法 第42条の2・第42条の3・第54条の2(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/323AC0000000205
- 厚生労働省「社会医療法人の認定について」 https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/isei/igyou/about_nintei.html
- 厚生労働省医政局長通知「『社会医療法人の認定について』の一部改正について」(令和6年3月30日医政発0330第8号) https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/001240036.pdf
- 厚生労働省 公表資料「社会医療法人への移行を考えた場合」 https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10800000-Iseikyoku/houkokusho_shusshi_15.pdf
- 兵庫県「社会医療法人」 https://web.pref.hyogo.lg.jp/kf15/syakaiiryohojin.html
特徴
対象規模
オプション機能
提供形態
診療科目
この記事は、時点の情報を元に作成しています。
