調剤時残薬調整加算は、薬局が患者の残薬を確認し、処方医の了承を得て調剤日数を減らしたときに算定する加算です。2026年6月1日施行の令和8年度調剤報酬改定で新設されました。
算定するのは薬局ですが、クリニックにも影響があります。薬局からの疑義照会の電話や、減らして調剤したという事後の報告が届くようになり、処方箋の残薬確認欄も同じ改定で書き換わりました。
この記事では、処方箋を出すクリニックの医師・医療事務に向けて、この加算をきっかけに何が届くのか、残薬確認欄のチェックをどう付けるか、届いた連絡を院内でどう処理するかを整理します。薬局側の算定要件は、クリニックの判断に関わる部分に絞って説明します。
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調剤時残薬調整加算は、残薬に合わせて調剤日数を7日分以上減らしたときの加算
調剤時残薬調整加算は、薬局の調剤管理料に上乗せする加算です。告示では、残薬が確認された患者について「処方医の指示又は処方医に対する照会の結果に基づき」、残薬調整のために7日分以上相当の調剤日数を変更した場合に算定できると定められています。
クリニック側が押さえておくべき要件は次の4つです。
- 処方医の了承が前提になる。薬局が独断で日数を減らしても算定できず、事前の疑義照会か、処方箋での減量指示のどちらかが必要
- 減らす量は原則7日分以上。6日分以下で算定するには、高額な抗がん剤で患者負担を減らす必要が特に高いなどの理由を、薬局がレセプトに書く
- 「処方医が同意したから」だけでは、6日分以下の調整は算定できない
- 薬局は、残薬の状況・理由・実際に渡した量などをクリニックに情報提供する
点数は、在宅患者やかかりつけ薬剤師が対応した場合が50点、それ以外が30点です。
重複投薬・相互作用等防止加算は廃止され、残薬分が独立した
令和6年度までは、残薬調整の疑義照会は「重複投薬・相互作用等防止加算」の一部(残薬調整に係るもの20点)として評価されていました。令和8年度改定でこの加算と在宅患者重複投薬・相互作用等防止管理料は廃止され、残薬調整は調剤時残薬調整加算、それ以外の照会(重複投薬や相互作用など)は薬学的有害事象等防止加算として、別々に評価されるようになりました。
服用薬剤調整支援料は廃止されておらず、令和8年度も残っています。多剤服用の患者について薬局から減薬の提案が届く仕組みは、これまでどおりです。
処方箋の残薬確認欄は令和8年6月から「減量した上で情報提供」に変わった
処方箋の備考欄にある「保険薬局が調剤時に残薬を確認した場合の対応」は、令和8年度改定で選択肢が変わりました。
| 令和6年度までの様式 | 令和8年6月からの様式 | |
|---|---|---|
| 1つ目 | 保険医療機関へ疑義照会した上で調剤 | 保険医療機関へ疑義照会した上で調剤(変更なし) |
| 2つ目 | 保険医療機関へ情報提供 | 調剤する薬剤を減量した上で、保険医療機関へ情報提供 |
これまでの「保険医療機関へ情報提供」は、処方どおり調剤して残薬の状況を後から伝えてもらう指示でした。新しい「調剤する薬剤を減量した上で、保険医療機関へ情報提供」は、薬局が残薬を確認したら、照会なしで日数を減らしてよいという指示です。医師の事前の了承を、処方箋の時点で渡しておく形になります。
厚生労働省の通知(令和8年3月5日 保医発0305第5号)では、それぞれのチェックで薬局が取る対応を次のように定めています。
- 「疑義照会した上で調剤」にチェック、またはどちらにもチェックがない:残薬を確認し、日数の調整が要ると判断したら、事前に処方医へ照会し、その結果に基づいて調剤する
- 「減量した上で情報提供」にチェック:残薬を確認して減らすべきと判断したときに、用法・用量は変えずに投与日数などを減らす調剤(減数調剤)を行う。行ったら、原則として翌営業日までにクリニックへ情報提供する
院内の電子カルテやレセコンで処方箋を印字している場合は、新様式に更新されているかを一度確認してください。旧様式のまま「保険医療機関へ情報提供」にチェックを付けても、新しい減量指示にはなりません。
調剤時残薬調整加算でクリニックに届く連絡は3種類
薬局がこの加算を算定する流れの中で、クリニックには次の3種類の連絡が届きます。
| 連絡 | いつ届くか | 届く手段 | クリニックがすること |
|---|---|---|---|
| 疑義照会 | 調剤の前、患者が薬局にいる間 | 主に電話 | その場で日数を減らしてよいか回答する |
| 減数調剤の事後報告 | 減量指示のある処方箋で減らしたとき、原則翌営業日まで | FAX・文書、または電子処方箋のコメント | 内容を確認し、カルテに残す。次回の処方日数を見直す |
| 服薬情報提供書(トレーシングレポート) | 急ぎではない残薬の理由や服薬状況を伝えたいとき | FAX・文書 | 次回の診察で参考にする |
疑義照会は、回答するまで患者が薬局で待っています。受付で電話を受けたら、どの医師の、どの患者の、どの薬の話かを聞き取り、診察の合間に医師へつなぐ段取りを決めておくと、待ち時間を短くできます。
減数調剤の事後報告には、残薬の状況、残薬が出た理由、実際に渡した量、患者に説明した内容などが書かれています。電子処方箋の場合は、電子処方箋管理サービスのコメント機能に書かれた内容を処方医が確認できれば、それで情報提供に代えられることになっています。紙の報告が来ないこともあるので、電子処方箋を使っているクリニックはコメントを見る場所と担当を決めておきます。
薬局は減数調剤をした患者に、次の受診時に残薬の状況を医師に伝えるよう促すことにもなっています。患者が「薬局で薬を減らされた」と話したときは、この報告と照らし合わせてください。
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残薬確認欄の2つのチェックの使い分け:どちらを選ぶクリニックか
どちらにもチェックがない処方箋は「疑義照会した上で調剤」と同じ扱いになります。実質的に決めることは、照会なしでの減量を薬局に任せてよいかどうかの1点です。
判断の境界は、日数が減っても処方の意図が崩れないかどうかです。
| 選ぶもの | 向いている条件 | 具体例 |
|---|---|---|
| 調剤する薬剤を減量した上で、保険医療機関へ情報提供 | 病状が安定した定期処方で、日数が多少減っても治療方針に影響しない。電話対応の負担を減らしたい | 高血圧・脂質異常症などの長期の定期処方、外用の保湿剤 |
| 保険医療機関へ疑義照会した上で調剤 | 日数や量を医師が意図して決めている。減らす前に医師が状況を聞きたい | 用量を調整中の薬、服用期間が決まっている薬、次の検査結果で処方を変える予定がある、飲み忘れの多さ自体を把握して処方を見直したい |
| どちらにもチェックしない | 残薬が出にくい処方で、指示を出す意味が薄い。照会が来れば都度判断すればよい | 数日分の急性期の処方、屯服を少量だけ出す場合 |
チェックはクリニック全体で決める必要はなく、処方箋ごとに付けられます。院内で運用をそろえるなら、「定期処方の患者には減量指示、それ以外は付けない」のように、処方の種類で既定を決めておくと迷いません。
減量指示を出しても薬局が勝手に「0日」にはしない
「減量した上で情報提供」にチェックを付けても、薬局は日数や数量を「0」にはできません。ある薬をまるごと今回は出さない、という調整をするときは、薬局から事前に照会が来ます。
また、残薬があるからといって機械的に減らすことも認められていません。通知では、患者が次回の受診日を見込んで意図的に手元に残しているのかなど、残薬調整が必要かを患者に確認してから減らすよう定めています。
薬局から残薬の連絡が来たときの院内フロー(チェックリスト)
受付と医師の役割を分けて、次の手順をそろえておくと、薬局を待たせず、記録も漏れません。
疑義照会の電話を受けたとき
- [ ] 薬局名、電話をかけてきた薬剤師の名前、折り返し先を聞く
- [ ] 患者の氏名・生年月日、処方日、処方医を聞いてカルテを開く
- [ ] 対象の薬、残っている量、薬局が提案している日数を聞き取る
- [ ] 医師に伝え、減らしてよいか、どの薬を何日分にするかの回答をもらう
- [ ] 薬局に回答する。患者が薬局で待っているので、医師が診察中なら回答の目安時間を先に伝える
- [ ] 照会の内容と回答をカルテに記録する
減数調剤の事後報告・服薬情報提供書が届いたとき
- [ ] 誰の、いつの処方箋についての報告かを確認し、カルテに取り込むか添付する
- [ ] 残薬が出た理由(飲み忘れ、自己判断で中断、副作用が気になるなど)を医師に回す
- [ ] 次回の処方日数や受診日の間隔を見直す必要があるか、医師が判断する
- [ ] 服薬状況について患者に確認したいことがあれば、次回の診察で聞く項目としてカルテに残す
- [ ] 電子処方箋の場合は、コメント欄の確認担当と確認のタイミング(例:毎日の診療後)を決めておく
地域包括診療加算・地域包括診療料を算定しているクリニックでは、令和8年度改定で、診療の際に患家の残薬を確認し、その結果をふまえて服薬を管理することが要件に加わりました。薬局から届く残薬の報告は、この確認の材料としても使えます。
処方日数の決め方そのものを見直したい場合は、処方箋の期限延長や、定期処方の患者に向くリフィル処方箋の記事もあわせて参考にしてください。
調剤時残薬調整加算についてよくある質問
調剤時残薬調整加算は患者の負担になりますか
薬局の調剤報酬に加算されるため、薬局で支払う自己負担額に含まれます。一方で、残っている分の薬を出さずに済むので、薬剤料はその分減ります。クリニックの診療報酬には影響しません。
「減量した上で情報提供」にチェックを付けると、毎回減らされますか
減らされるのは、薬局が残薬を確認し、患者に必要性を確かめたうえで減らすべきと判断したときだけです。残薬がなければ処方どおりに調剤されます。
薬局からの事後報告に返事は必要ですか
通知上、クリニックからの返答は求められていません。ただし、残薬の理由によっては処方の見直しが必要になるため、医師が目を通し、必要なら次回の処方に反映してください。
院外処方箋の印字が旧様式のままだとどうなりますか
旧様式の「保険医療機関へ情報提供」は、新様式の「減量した上で情報提供」とは別の指示です。旧様式でチェックを付けても、照会なしの減量を許可したことにはなりません。減量指示を使いたい場合は、電子カルテやレセコンの処方箋様式を新しいものに更新してください。
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まとめ
調剤時残薬調整加算は、医師の了承のもとで薬局が残薬に合わせて日数を減らしたときの加算です。クリニックが決めることは、処方箋の新しい選択肢「調剤する薬剤を減量した上で、保険医療機関へ情報提供」を、どの処方で使うかです。あわせて、疑義照会の電話と事後報告を受けたときの院内の手順を決めておくと、薬局を待たせずに済みます。
参考
- 令和8年度診療報酬改定について(厚生労働省)
- 別表第三 調剤報酬点数表(令和8年度)(厚生労働省)
- 別添3 調剤報酬点数表に関する事項(令和8年3月5日 保医発0305第6号)(厚生労働省)
- 保険医療機関及び保険医療養担当規則等の一部改正に伴う実施上の留意事項について(令和8年3月5日 保医発0305第5号)(厚生労働省)
- 令和8年度診療報酬改定の概要【調剤】(厚生労働省保険局医療課)
- 令和8年度診療報酬改定 重点的な対応が求められる分野(医薬品適正使用)(厚生労働省)
- 疑義解釈資料の送付について(その2)(令和8年4月1日 厚生労働省保険局医療課事務連絡)
- 疑義解釈資料の送付について(その7)(令和8年5月29日 厚生労働省保険局医療課事務連絡)
- 疑義解釈資料の送付について(その12)(令和8年9月2日 厚生労働省保険局医療課事務連絡)
特徴
対象規模
オプション機能
提供形態
診療科目
この記事は、時点の情報を元に作成しています。
