医療費控除を受けるには、確定申告書に「医療費控除の明細書」を添付します。領収書を束ねて出す必要はありませんが、その代わりに明細書を自分で埋めなければなりません。
この記事では、家族の医療費をまとめて申告する方に向けて、明細書の欄ごとの書き方を記入例つきで整理します。交通費、高額療養費や保険金の差し引き、医療費通知(健康保険組合などの「医療費のお知らせ」)を使うかどうかの判断も扱います。内容は国税庁の明細書の記載要領と、タックスアンサーNo.1119・No.1120・No.1122で確かめたものです。
控除額の計算の考え方や、どの費用が対象になるかの一覧は「医療費控除の計算方法」にまとめています。
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医療費控除の明細書は3つのブロックでできている
明細書の裏面(記入面)は、上から次の3つに分かれています。
| ブロック | 書くこと | 書く人 |
|---|---|---|
| 1 医療費通知に記載された事項 | 医療費通知の合計額と、そこから差し引く金額 | 医療費通知を添付する人だけ |
| 2 医療費(上記1以外)の明細 | 領収書をもとに、人・支払先ごとの医療費 | 通知に載っていない医療費がある人 |
| 3 控除額の計算 | 1と2の合計から控除額を出す | 全員 |
最初に決めるのは「医療費通知を使うかどうか」です。使えば、通知に載っている分は1に合計額を書くだけで済み、その分の領収書の保存も要らなくなります。使わなければ、すべての医療費を2に書きます。
医療費通知を使う場合と使わない場合の境界線
医療費通知は、次の6項目がすべて載っているものだけが添付書類として使えます。
- 被保険者等の氏名
- 療養を受けた年月
- 療養を受けた者の氏名
- 療養を受けた病院・診療所・薬局等の名称
- 被保険者等が支払った医療費の額(自己負担額)
- 保険者等の名称
6項目がそろっていても、通知の内容によって書き方が分かれます。
| 状況 | どう書くか |
|---|---|
| 6項目がそろい、金額も実際の支払いと合っている | 1に書く。通知を添付し、その分の領収書は保存不要 |
| 自己負担額がなく、医療費総額(10割分)だけが載っている | そのままでは使えない。領収書から2に書くか、自己負担額を通知に書き足す |
| 病院・薬局の名称が空欄の行がある | その行は領収書から2に書くか、名称を書き足す |
| 子ども医療費助成などで窓口負担が0円なのに、通知には自己負担額が載っている | 1の(2)に実際に払った額を書き、通知に減免がある旨を書き添える |
| 自由診療、市販薬、通院の交通費がある | 通知には載らないので、2に書く |
書き足した行や2に書いた分は、領収書を確定申告期限から5年間保存します。通知には前年に支払った分が載っていることがあるので、その年の1月1日〜12月31日に払った分だけを数えてください。
明細書「1 医療費通知に記載された事項」の記入例
医療費通知を添付する場合は、(1)〜(3)の3つの欄だけを書きます。
| 欄 | 書くこと | 記入例 |
|---|---|---|
| (1) 医療費通知に記載された医療費の額(自己負担額) | 通知の自己負担額の合計。通知が複数あれば全部足す | 86,500円 |
| (2) (1)のうちその年中に実際に支払った医療費の額 | (1)からその年に払っていない分を除いた額 | 79,300円 |
| (3) (2)のうち生命保険や社会保険(高額療養費など)などで補填される金額 | (2)に対して受け取る保険金や給付金 | 0円 |
通知に保険者番号や記号・番号が載っている場合は、復元できない程度に塗り潰してから添付します。
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明細書「2 医療費の明細」の書き方:欄ごとの記入例
2は、領収書をもとに書く欄です。領収書1枚ごとに1行書く必要はなく、「医療を受けた人」と「支払先」の組み合わせごとにまとめて1行にできます。同じクリニックに10回通っても、1行で済みます。
夫・妻・子の3人分をまとめて申告する場合の記入例です。
| (1) 医療を受けた方の氏名 | (2) 病院・薬局などの支払先の名称 | (3) 医療費の区分 | (4) 支払った医療費の額 | (5) (4)のうち生命保険や社会保険などで補填される金額 |
|---|---|---|---|---|
| 山田 一郎 | Aクリニック | 診療・治療 | 18,400円 | |
| 山田 一郎 | B薬局 | 医薬品購入 | 6,200円 | |
| 山田 花子 | C病院 | 診療・治療 | 180,000円 | 50,000円 |
| 山田 健太 | D小児科 | 診療・治療 | 4,800円 | |
| 山田 健太 | ○○バス | その他の医療費 | 2,880円 | |
| 2の合計 | 212,280円 | 50,000円 |
医療費の区分は、当てはまるものすべてにチェックする
区分は「診療・治療」「介護保険サービス」「医薬品購入」「その他の医療費」の4つです。1つの支払先で診療と医薬品の両方を払ったときは、2つともチェックします。1枚の領収書に家族数人分の薬が載っているときは、人ごとに行を分けて書きます。
手書きで提出するときの用紙
紙で出す場合は、国税庁ホームページの確定申告の手引きのページから明細書の様式を印刷して手書きします。
医療費控除の交通費(通院費)の書き方
通院のための電車代やバス代は、2の表に病院とは別の行で書きます。区分は「その他の医療費」です。上の記入例の「○○バス」の行がそれにあたります。
- (1)には、通院した患者本人の名前を書く
- (2)には交通機関の名前を書く。乗り継ぎで支払先が複数あるときは「JR、○○バス」のようにまとめてよい
- (4)にはその年の往復運賃の合計を書く
交通費が対象になるかどうかの境界線は次のとおりです。
| 費用 | 対象か |
|---|---|
| 通院のための電車・バス代 | 対象 |
| 子どもの通院に付き添った親の交通費 | 対象(患者の名前の行に含めて書く) |
| タクシー代 | 電車やバスが使えない場合だけ対象 |
| 自家用車のガソリン代・駐車場代 | 対象外 |
| 入院中の家族の世話に通う交通費 | 対象外(患者本人が通院していないため) |
記入例の2,880円は、子どもと付き添いの親のバス代(片道240円×2人×往復×3回)です。電車やバスは領収書が出ないことが多いので、通院した日、区間、金額を控えておくと、あとで確認を求められたときに説明しやすくなります。
高額療養費・保険金で補填される金額の差し引き方と記入例
医療費の補填として受け取ったお金は、(5)の欄(医療費通知の分なら1の(3))に書き、医療費から差し引きます。
| 差し引くもの | 差し引かないもの |
|---|---|
| 高額療養費、出産育児一時金、家族療養費 | 傷病手当金、出産手当金 |
| 生命保険・医療保険の入院給付金、手術給付金 | 死亡や重度障害を理由とする保険金 |
| 医療費の補填を目的とする損害賠償金 |
高額療養費の制度そのものや申請方法は「高額療養費制度の申請方法」で扱っています。
補填額は、その医療費の額が上限
差し引くのは、給付の目的になった医療費の額までです。たとえばA病院に220,000円払い、A病院の入院に対して生命保険から300,000円受け取った場合、(5)には220,000円と書きます。引ききれない80,000円を、ほかの病院の医療費から差し引くことはしません。
複数の病院にまたがる高額療養費は按分する
1か月の高額療養費が複数の病院の医療費に対して支払われたときは、医療費の割合で分けます。B病院50,000円、C病院100,000円に対して高額療養費60,000円が出たなら、次のとおりです。
- B病院の行:60,000円×50,000/150,000=20,000円
- C病院の行:60,000円×100,000/150,000=40,000円
申告時にまだ金額が決まっていないとき
高額療養費や保険金の額が申告時点で決まっていなければ、見込額を書きます。あとで受け取った額が見込額より多ければ修正申告、少なければ更正の請求で直します。
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明細書「3 控除額の計算」の記入例:A〜Gの順に転記する
3は、上で書いた金額をA〜Gの欄に順に入れていく欄です。医療費通知を使わず、2の記入例だけで申告する場合(所得金額の合計が400万円)で書くと次のようになります。
| 欄 | 入れる金額 | 記入例 |
|---|---|---|
| A 支払った医療費 | 1の(2)と2の(4)の合計 | 212,280円 |
| B 保険金などで補填される金額 | 1の(3)と2の(5)の合計 | 50,000円 |
| C 差引金額(A-B) | 162,280円 | |
| D 所得金額の合計額 | 申告書第一表の所得金額の合計欄から転記 | 4,000,000円 |
| E D×0.05 | 200,000円 | |
| F Eと10万円のいずれか少ない方 | 100,000円 | |
| G 医療費控除額(C-F) | 最高200万円。申告書第一表の医療費控除欄へ転記 | 62,280円 |
10万円と所得の5%のどちらを引くか、還付される税額がいくらになるかは、「医療費控除の計算方法」で計算例を示しています。
e-Taxと紙で明細書の出し方はどう違うか
明細書の欄の構成は同じですが、医療費通知の扱いと入力の手間が変わります。
| 紙で提出 | e-Tax(確定申告書等作成コーナー) | |
|---|---|---|
| 明細書 | 手書きして申告書に添付 | 画面で入力すると明細書のデータが作られる |
| 医療費通知 | 原本を添付(番号部分は塗り潰す)。マイナポータルで取得した通知情報を二次元コード付きで印刷した書面でも代えられる | 通知の内容を入力して送信すれば添付は不要。通知は5年間保存する |
| マイナポータル連携 | 自動入力は無い | 毎年2月9日以降、前年1〜12月の保険診療分の医療費を自動入力できる |
| 領収書が多いとき | 手で集計する | 国税庁の「医療費集計フォーム」(Excel)に入力して読み込める |
| 領収書の保存 | 2に書いた分を5年間 | 同じ |
マイナポータル連携で家族分を取り込むには、事前にマイナポータルで代理人の登録をしておきます。はり・きゅうや整骨院の施術費などは連携で取れないので、2に入力します。医療費集計フォームは、セルフメディケーション税制を選ぶ人は使えません。
よくある質問
明細書のほかに領収書も提出しますか
提出は不要です。ただし、確定申告期限から5年間、税務署から提示や提出を求められることがあるので、2に書いた分の領収書は自宅で保存します。
おむつ使用証明書は添付しますか
証明年月日、証明書の名称、証明者の名称を明細書の欄外の余白に書けば、添付を省略できます。証明書は領収書と一緒に5年間保存します。
医療費通知と領収書を両方使ってもよいですか
使えます。通知に載っている分を1に、通知に無い自由診療や市販薬、交通費を2に書き、3で合計します。同じ医療費を1と2の両方に書かないよう注意してください。
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まとめ
- 明細書は「1 医療費通知」「2 医療費の明細」「3 控除額の計算」の3ブロック。先に医療費通知を使うかを決める
- 2は領収書1枚ごとではなく、人×支払先ごとに1行でまとめられる
- 交通費は病院と別の行に「その他の医療費」で書く。タクシーは公共交通が使えないときだけ、ガソリン代と駐車場代は対象外
- 高額療養費や保険金は(5)に書く。その医療費の額が上限で、複数の病院にまたがるときは按分する
- e-Taxなら医療費通知の添付が要らず、マイナポータル連携で保険診療分を自動入力できる
参考
- 国税庁「令和7年分 所得税及び復興特別所得税の確定申告の手引き 医療費控除の明細書」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/tebiki/2025/06/6_01.htm
- 国税庁「医療費控除を受けられる方へ」(令和7年12月) https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/tebiki/2025/pdf/008.pdf
- 国税庁「医療費控除の明細書【内訳書】」記載例 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/kisairei/pdf/iryohikozyo.pdf
- 国税庁 タックスアンサー No.1119 医療費控除に関する手続について https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1119_qa.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除) https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1120.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.1122 医療費控除の対象となる医療費 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1122.htm
- 国税庁 質疑応答事例「患者の世話のための家族の交通費」 https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/shotoku/05/20.htm
- 国税庁 質疑応答事例「出産のために欠勤した場合に給付される出産手当金」 https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/shotoku/05/27.htm
- 国税庁「医療費控除のマイナポータル連携について」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/tokushu/keisubetsu/pdf/0025009-005.pdf
- 国税庁「医療費集計フォームのダウンロード」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/tokushu/keisubetsu/iryou-shuukei.htm
特徴
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この記事は、時点の情報を元に作成しています。
