社会保険の適用拡大はクリニックにいつ来る?医療法人・個人開設別の判定表とパート職員の保険料試算

短時間で働くパート職員の社会保険の加入要件は、2026年10月1日に賃金要件(月額8.8万円以上)がなくなり、次は2027年10月に企業規模要件が「51人以上」から「36人以上」に下がります。その後も2029年、2032年、2035年と段階的に下がり、最終的には従業員数にかかわらず対象になります。

この記事は、受付や医療事務、看護師、医療助手をパートで雇っている診療所の院長・事務長に向けて、自院がいつ対象になるかの判定、対象になるパート職員の数え方、院が負担する保険料の見込み、本人への説明までの段取りを整理します。制度の内容は日本年金機構と厚生労働省の資料で確かめたものです。

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目次
  1. 社会保険の適用拡大の時期:2026年10月に賃金要件撤廃、2027年10月から企業規模要件の引き下げ
  2. 自院が対象になるかの判定表:医療法人・個人開設×従業員数×時期
  3. 加入対象になるパート職員の判定:週20時間・2か月超・学生でない
  4. パート職員の社会保険料はいくら増えるか:計算例
    1. 保険料調整制度で本人の負担を3年間軽くできる
  5. 適用拡大までの準備チェックリスト
  6. よくある質問
    1. 分院がある医療法人は、従業員数をどう数えますか
    2. 扶養の範囲で働きたいパート職員も加入しなければいけませんか
    3. 個人開設で従業員が4人の診療所は、何もしなくてよいですか
  7. まとめ
  8. 参考

社会保険の適用拡大の時期:2026年10月に賃金要件撤廃、2027年10月から企業規模要件の引き下げ

令和7年の年金制度改正法(令和7年法律第74号)で決まった、短時間労働者の健康保険・厚生年金保険の加入拡大の日程は次のとおりです。

時期 変わること
2026年10月1日(実施済み) 賃金要件(所定内賃金が月額8.8万円以上)を撤廃
2027年10月 企業規模要件を36人以上に引き下げ
2029年10月 企業規模要件を21人以上に引き下げ。個人事業所は業種にかかわらず常時5人以上で適用対象に(2029年10月時点で既にある事業所は当分の間対象外)
2032年10月 企業規模要件を11人以上に引き下げ
2035年10月 企業規模要件を撤廃(10人以下も対象)

ここでいう「従業員数」は、パート職員を含めた全員の数ではありません。フルタイムの職員と、労働時間・日数がフルタイムの4分の3以上の職員の合計、つまり厚生年金保険の被保険者数です。1年のうち6か月以上、この人数が基準を超えると見込まれる事業所が対象になります。

賃金要件の撤廃は、週20時間以上働くパート職員が月8.8万円未満でも加入対象になる、という意味です。ただし、まだ企業規模要件を満たしていない診療所では、パート職員は加入対象になりません。2026年10月の変更で賃金要件がどう変わったかは「106万円の壁の撤廃とクリニックへの影響」で説明しているので、この記事では企業規模要件と開設主体ごとの扱いを中心に見ていきます。

自院が対象になるかの判定表:医療法人・個人開設×従業員数×時期

診療所の場合、まず開設主体で「社会保険の適用事業所かどうか」が決まり、次に従業員数で「パート職員が加入対象になる時期」が決まります。

開設主体 社会保険の適用 従業員数の数え方 パート職員(週20時間以上・4分の3未満)が加入対象になる時期
医療法人 法人なので強制適用(院長1人だけでも適用事業所) 法人番号が同じすべての事業所の合計(分院を含む) 51人以上は既に対象。36〜50人は2027年10月、21〜35人は2029年10月、11〜20人は2032年10月、10人以下は2035年10月
個人開設で常時5人以上 医療は法定17業種に含まれるので強制適用 適用事業所(診療所)ごとの被保険者数 同上
個人開設で常時5人未満 強制適用ではない。従業員の半数以上の同意で任意適用にできる — 任意適用を受けていなければ、パートもフルタイムも社会保険の対象外(国民健康保険・国民年金)

医療法人は、院長だけの「一人医療法人」でも強制適用事業所です。フルタイムの職員や4分の3以上働く職員は、すでに全員が加入しています。今回の拡大で新たに加入するのは、週20時間以上で4分の3未満の職員です。

個人開設の診療所は、医療が法定17業種に入っているため、常時5人以上の従業員がいれば今も強制適用です。2029年10月の「個人事業所は業種にかかわらず常時5人以上で適用」という改正は、飲食や理美容などこれまで対象外だった業種に向けたもので、診療所の扱いは変わりません。院長本人は事業主なので、従業員数にも被保険者にも入りません。

院の厚生年金保険の被保険者数が分からない場合は、日本年金機構の事業所検索で確かめられます。

自院の例 判定
医療法人で本院28人・分院12人(いずれも被保険者数) 合計40人。2027年10月からパート職員が加入対象
個人開設で被保険者8人、パート5人 2035年10月からパート職員が加入対象。それまでは任意で前倒しできる
個人開設で常時4人 強制適用ではない。任意適用を受けない限り変わらない

加入対象になるパート職員の判定:週20時間・2か月超・学生でない

自院が対象になったら、パート職員を1人ずつ次の条件に当てはめます。すべてに当てはまる人が加入対象です。

条件 確かめること
週の所定労働時間が20時間以上 雇用契約書や就業規則で決めた、通常の週の労働時間。残業は含めない
フルタイムの4分の3未満 4分の3以上なら、企業規模にかかわらず既に加入対象
2か月を超えて雇用される見込み 2か月以内の契約でも、更新して2か月を超える見込みがあれば当初から対象
学生ではない 高校生・大学生・専門学校生など。夜間学生や休学中の人は対象

賃金要件は撤廃されたため、時給や月収は判定に使いません。例外は、最低賃金の減額特例の許可を受けていて所定内賃金が月額8.8万円未満の人で、原則は加入対象外です(本人の申出で加入はできます)。

診療所でよくある働き方に当てはめると、次のようになります。

職員の例 判定
受付パート、週4日×6時間(週24時間)、期間の定めなし 対象
看護師パート、週2日×8時間(週16時間) 対象外(20時間未満)
医療事務パート、週5日×4時間(週20時間)、3か月契約で更新予定 対象(20時間ちょうどでも対象。更新見込みで2か月超)
看護学生のアルバイト、週20時間 対象外(学生)
医療助手パート、週22時間、72歳 厚生年金は70歳以上は対象外。健康保険は加入対象

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パート職員の社会保険料はいくら増えるか:計算例

院が負担するのは、健康保険料・厚生年金保険料の半分と、子ども・子育て支援金の半分、そして全額事業主負担の子ども・子育て拠出金です。次の前提で1人あたりの月額を計算します。

  • 協会けんぽ東京支部、令和8年度の保険料率(健康保険9.85%、子ども・子育て支援金0.23%)
  • 厚生年金保険料率18.3%、子ども・子育て拠出金率0.36%
  • 時給1,200円×週20時間。月の報酬は1,200円×20時間×52週÷12か月=約104,000円で、標準報酬月額は104,000円
  • 40歳未満(介護保険料なし)。賞与なし
項目 院の負担(月額) 本人の負担(月額)
健康保険料 5,122円 5,122円
子ども・子育て支援金 119.6円 119.6円
厚生年金保険料 9,516円 9,516円
子ども・子育て拠出金 374.4円 なし
合計 約15,132円 約14,758円

院の負担は1人あたり月約1.5万円、年約18.2万円です。対象のパート職員が4人いれば、年約73万円になります。40歳以上65歳未満の職員は介護保険料(東京支部1.62%)が加わり、健康保険料の院の負担が5,964.4円になります。賞与を払う場合は、賞与にも保険料がかかります。

都道府県で健康保険料率が違うため、自院の数字は協会けんぽの都道府県別の保険料額表か、厚生労働省の「社会保険適用拡大特設サイト」の事業主向け試算ツールで確かめてください。

保険料調整制度で本人の負担を3年間軽くできる

2026年10月からは、新たにパート職員を加入させる事業所が使える「保険料調整制度」があります。院が本人の保険料の一部を一時的に負担すると、本人の負担が通算3年間軽くなります。院が追加で払った分は3か月後の保険料から差し引かれるので、院が最終的に納める保険料は増えません。本人が将来受け取る年金額も減りません。

項目 内容
使える事業所 2027年10月以降の企業規模要件の引き下げで対象になった事業所、2026年10月以降に任意特定適用事業所(労使合意でパートを加入対象にした事業所)になった事業所など
使えない事業所 2026年10月1日時点で既にパート職員が加入対象だった事業所、上の条件に当てはまる前に従業員数が常時51人以上になった事業所
対象の職員 標準報酬月額12.6万円以下(月収13万円未満)、週20時間以上で4分の3未満、学生でない
本人:院の負担割合 標準報酬月額で決まる。計算例の10.4万円なら1・2年目は36:64、3年目は43:57
申出の期限 対象になった月から2年以内

制度は事業所単位で適用され、希望した職員だけに使うことはできません。対象になった職員全員に適用されます。

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適用拡大までの準備チェックリスト

対象になる時期が分かったら、少なくとも半年前から次の順で進めます。

時期の目安 やること
対象になる時期の6か月前 厚生年金保険の被保険者数を確かめる(医療法人は分院を合算)。対象になる時期を確定する
同上 パート職員の一覧を作る。所定労働時間、契約期間と更新の見込み、学生かどうか、年齢を並べる
5か月前 加入対象になる人数と、院の保険料負担の年額を試算する。保険料調整制度を使うかを決める
4か月前 対象の職員と面談する。手取りの変化、配偶者の扶養から外れること、傷病手当金・出産手当金・将来の年金が増えることを説明する
3か月前 本人の希望を聞いたうえで、週の所定労働時間や契約を見直す。週20時間前後の職員は、加入するか、時間を見直すかを本人と決める
2か月前 シフト表を新しい所定労働時間で組み直す。給与計算ソフトの保険料控除の設定を確かめる
対象になる月 加入する職員の被保険者資格取得届を日本年金機構に出す

個人開設の診療所で、職員が医師国保などの国民健康保険組合に入っている場合は、健康保険の手続きが変わります。国保組合に引き続き加入するには、資格取得届と一緒に「健康保険被保険者適用除外承認申請書」を、事実発生日から14日以内に出す必要があります。新たに加入する職員の扱いは、先に国保組合と年金事務所に確かめてください。

職員への説明に自信がなければ、年金事務所に申し込むと、社会保険労務士などの専門家を無料で派遣してもらえます。顧問の社会保険労務士がいる場合は、そちらに相談してください。

よくある質問

分院がある医療法人は、従業員数をどう数えますか

法人番号が同じすべての事業所の厚生年金保険の被保険者数を合計します。本院と分院がそれぞれ20人でも、合計40人なので2027年10月から対象です。個人開設の場合は、診療所ごとの被保険者数で判断します。

扶養の範囲で働きたいパート職員も加入しなければいけませんか

院が対象になり、職員が週20時間以上などの条件に当てはまれば、本人の希望にかかわらず加入対象です。加入すると配偶者の健康保険の扶養から外れます。加入を避けたい職員とは、所定労働時間を週20時間未満にするかを本人の意向を聞いて話し合い、契約書に反映します。

個人開設で従業員が4人の診療所は、何もしなくてよいですか

常時5人未満の個人開設の診療所は強制適用ではないため、今回の拡大でも加入義務は生じません。ただし、5人以上に増えると強制適用事業所になります。従業員の半数以上の同意があれば、任意適用事業所として社会保険に加入することもできます。

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詳しい内容を知りたい方は下記フォームからお問い合わせください。

まとめ

社会保険の適用拡大がいつ自院に来るかは、開設主体と厚生年金保険の被保険者数で決まります。まずは被保険者数とパート職員の所定労働時間を一覧にして、対象になる時期と人数、院の保険料負担を出すところから始めてください。

参考

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対象規模

無床クリニック向け 在宅向け

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提供形態

サービス クラウド SaaS 分離型

診療科目

内科、精神科、神経科、神経内科、呼吸器科、消化器科、、循環器科、小児科、外科、整形外科、形成外科、美容外科、脳神経外科、呼吸器外科、心臓血管科、小児外科、皮膚泌尿器科、皮膚科、泌尿器科、性病科、肛門科、産婦人科、産科、婦人科、眼科、耳鼻咽喉科、気管食道科、放射線科、麻酔科、心療内科、アレルギー科、リウマチ科、リハビリテーション科、、、、