
クリニックでの開業を行った際に、開業後の問題点の一つとしてスタッフが定着しないことが挙げられます。スタッフが定着しないことによって、安定した「質」の医療サービスが提供できないという問題が生じるケースが多いです。
スタッフが定着しなければサービスの質の低下を誘因し、患者トラブルの原因になることもあります。結果的に患者様が離れていってしまうことにもなりかねません。
今回はそのような事例とスタッフの確保のために必要なポイントについてご紹介します。
クリニックのスタッフが「定着しないデメリット」とは?
スタッフが定着しないことでさまざまなデメリットが生まれるのか?について、事例とともにお伝えします。
患者の個別性に応じたサービスが提供できない
クリニックに通う患者様の多くは、基本的にそのクリニックがかかりつけになっているはず。
多くの患者様がその「かかりつけクリニック」に求めていることとして、
- 「いつもここでお世話になっているからこのクリニックで診てもらいたい」
- 「このクリニックの先生だから通いたい」
などの安心感が挙げられます。
では、毎回違う看護師・顔も名前もわからない派遣看護師で安心できるサービスの提供ができるのか?といわれると、現場を経験した筆者としては、患者様と初めて接する派遣看護師にはそのようなことは(あまりうまくは)できないと感じています。
患者様によっては、採血がこの部位しかできない・アレルギーがある・いつも受診する際のルーチンの決まりがあることもあるものです。
多くの患者様は「かかりつけなので自分の決まりは理解してもらっている」という心理的前提があるため、それがわからない・知らない状態で対応をされた場合に「なんでいつもの決まりがわからないの?いつもの人じゃないの?」とスタッフを通じて、クリニック全体への不信感ヘと繋がってしまう可能性があります。
実際に、そのような内容でクレームをいただいたこともあります。
クリニック内の物品位置・整理ができず、時間ロスが生まれる
クリニックで業務を行う上では、以下のような管理が発生します。
- 物品管理
- 動線整理
- 配置管理
- 診療手順の整理
派遣看護師ばかりだとそのようなクリニックの内部状況を把握するのに時間がかかるうえ、理解しきれずに業務を終えることも珍しくありません。
医師は基本的に診察や医師の手技を必要とする検査を行い、看護師はそれ以外の全般の介助などを行います。その全般の介助をいつも行っている看護師だからこそ、状況の理解もスムーズになり、医師の診察前後の流れや患者の層を理解した医師のサポートが可能になるのです。
派遣看護師の場合は、そうとは限りません。全てが初めてのため物品のことや動線のことなど全て医師か他のスタッフで毎日指導する手間と時間がかかります。毎日、一定時間の時間ロスが生じてしまうため、年間にすると大きな時間ロスとなってしまいます。
マニュアルの作成・準備・業務説明などの手間がかかる
派遣看護師は初めて訪問する方が多いため、院内のルールや提携先についてはおおよその場合、知らないものです。
なので派遣看護師を採用する場合には、派遣看護師で初日に来た場合でもその内容を理解できるようにマニュアルを整える必要があります。毎日の処置や検査、患者対応のマニュアルなども準備しておかなければいけません。
また、その内容を派遣看護師がクリニックに到着して診察がスタートする間までの少ない準備時間のなかでオリエンテーションと同時に診療補助内容についても伝える必要があります。
マニュアルだけで理解できる看護師であれば良いですが、そうでない看護師の場合には診療介助がスムーズに行えず患者様を待たせてしまう場合や、清潔物品を看護師のミスにより不潔にしてしまい新たな消毒コストをかけてしまう…というケースもあります。
クリニックのスタッフが「定着するメリット」とは?
では次にスタッフが定着することで、どのようなメリットがあるのか。具体例とともにお話していきます。常勤スタッフを雇用することでの資金はかかりますが、それ以上のメリットがあると思うのでぜひ参考にしてください。
全体の動線管理・診察がスムーズに行える
派遣看護師でなく、パートや常勤などの動線や物品使用状況のわかるスタッフがいれば動線や診療・クリニックに合わせた業務改善を看護師と一緒に行えます。
基本的に物品の管理に関しては、診察の補助につく看護師に管理してもらった方がスムーズです。診察時に使用する器具の使用数なども大体把握しているので、追加したい物品や多めの準備してもらいたものなどがあれば、それも看護師に依頼できるのです。
仕事は準備が9割。診察の回転がスムーズになり診察時の医師のストレスは減らせるでしょう。さらに安定した診察によって、患者様の安心感や信頼感にも繋がります。
クリニックの信頼にもつながる
看護師と患者様との接触頻度は高いもの。常に一定の看護師が関わる体制が作れると、患者様の個別性に応じた看護も可能になります。
例えば、
- Aさんの場合は透析シャントが左手のため必ず右手で採血をする。
- Bさんの場合は、杖歩行のため診察時には歩行介助をして診察室へ誘導する。
- Cさんの場合には、アルコール消毒だと、皮膚が赤くなってしまうためアルコール綿禁の対応を行う。
などのように、それぞれに応じた個別の看護を提供できるのです。
安定した個別性の看護を提供することで、患者様からは看護師・医師ともに信頼を得られかかりつけクリニックとして継続して来院していただくことが可能です。
人材流出を防ぐために知りたい「嫌われる医者」とは…
クリニックに安定した人材を維持するためにも、医師自身もスタッフが働きやすい職場づくりを行うための注意・配慮を行う必要があります。
クリニックで診察を行うのは医師ですが、医師だけではなく他のスタッフの力を借りて初めて診察ができます。
そのような意味でも、医師は他スタッフと円滑に業務が行えるように「嫌われない医者」になることが必須といえます。では、どのような医者だと嫌われてしまうのでしょうか?
筆者が体験した具体例とともにご紹介します。
若い看護師とそうでない看護師で態度が変わる
筆者の主観ではありますが、このタイプの医師はすごく多いです!
が若い20代の看護師に対しては、愛想良く・用事もないのに話しかけたり・やたらスキンシップが多く、若いスタッフにのみ「〜ちゃん」「〜ぴょん」など看護師の名前呼びをしていることもありました。
一方、キャリアを積んだ看護師に対しては、厳しい物言いをしたり、診察に関連した報告などでも目を合わさない・話を聞いて流す。などのいわゆる「塩対応」をしている医師です。
このような態度を、他の看護師はよく見ています。クリニックは閉鎖的な環境になりやすいので、このような状態が続くとキャリアがあり頼れる看護師が辞めてしまいます。
このような態度は、仕事の信頼関係にも影響してきますので注意した方がよいでしょう。心当たりがなくとも、無意識にそういった「接し方の違い」が出ていないかは、注意しておいた方がいいかもしれません。
コスト管理に厳しすぎて感染対策をしていない
クリニックも商売である以上、コスト管理を行う必要があります。しかし、コスト管理に厳しすぎてもいけません。
筆者が衝撃を受けたのは、血液・体液汚染のリスクがある処置を感染防護具なしで行うよう指示されたことでした。理由としては、要約すると「防護具にかけるコストがもったいない」とのこと……。
基本的に、病院では針刺しをしてしまった場合には定期的な採血フォローが入ります。しかしクリニックでは検査もなければフォロー自体が一切なく、「気づいたら感染してしまっていた」というケースが多いと感じています。
実際に、筆者の母も看護師ですがクリニックでの勤務で針刺しをしてしまいB型肝炎のキャリアとなってしまいました。
このようなケースで感染してしまったリスクを考えると、看護師として怖くて仕事を行うことはできません。しかし、実際に今でもこのようなクリニックもあると耳にします。コスト管理は大切ですが、感染対策はきちんと行うようにしてください。
スタッフ教育・勤務環境に無頓着
クリニックでの教育体制が整っているかどうかも、スタッフが定着するかどうかの大事な視点となります。
しかし、医師は基本的に看護師やスタッフの教育に関して無頓着・無関心なケースが多いように感じます。
クリニック全体での院内マニュアルや規則・ルールが曖昧なことも多く、もし規則があったとしても、きちんとマニュアルとして開示してあるわけではなく口頭で伝えるようなゆるいものがほとんどで、医師の気分や状況で変わることが多いです。
このような曖昧な状態で、きちんと安定したサービスが提供できるでしょうか?曖昧な状況の場合、看護師もどうしたらいいかわかりません。スタッフの入れ替わり時に、規則の共有や統一ができずに曖昧な状態が継続することでその環境を自分のルールで統一したいと思うお局看護師が独自のルールを他のスタッフへ指導してしまうという、「お局看護師の独裁政治」を誘因する要素となります。
そのような状況が続くと、看護師同士での人間関係の悪化や他スタッフとの問題が生じやすくなり、いずれはクリニック全体への悪評となってしまうケースもあります。
クリニックなどの狭い空間だからこそ、この空間に耐えきれず人がどんどん辞めてしまう負のループに入ってしまうことでしょう。
スタッフの定着は重要なキーのひとつである
スタッフが定着することはクリニックの信頼にもつながり、重要なポイントになります。
スタッフが安定した質の高いサービスを行うためには、医師自身も自身の経営方針や教育体制・感染管理などさまざま点を見直し「スタッフが定着しやすい環境」を整えることも重要です。
特徴
その他特徴
タイプ
提供人材
対応業務
診療科目
特徴
対応業務
提供人材
タイプ
その他特徴
診療科目
この記事は、2022年11月時点の情報を元に作成しています。
執筆 看護師ライター優 かおる
医療記事・コラム・SEO記事を中心に執筆。看護師としての経験を病院外でも活かしている。文章を読んだ読者が少しでも「読んでよかった」と思える記事を執筆するように心がけている。100名以上が参加する看護学生向けのオンラインセミナーも経験。資料作成も得意。
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