医師のキャリアを語るとき、「臨床医」と「研究医」という区分がよく使われます。多くの医師は臨床医として働いていますが、この2つが排他的な選択肢だと思われていることが少なくありません。
実際には、両者の間には制度化された中間の道があり、行き来も可能です。
本記事では臨床医の定義を確認したうえで、研究医との違い、そしてどちらを選ぶかを判断するための条件を整理します。
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臨床医とは何か
患者の診療に直接関わる医師
臨床医とは、病院や診療所で患者の診察・診断・治療・予防に直接関わる医師を指します。
「臨床」という言葉は、患者のベッドサイドに臨むという意味に由来します。医師免許を持つ人の大多数が臨床医であり、私たちが「お医者さん」として日常的に接するのは臨床医です。
臨床研修医とは別の言葉
混同されやすいのが「臨床研修医」です。
- 臨床医 — 患者診療に携わる医師全般を指す広い言葉
- 臨床研修医 — 医師免許取得後2年間の初期臨床研修を受けている医師
つまり臨床研修医は、臨床医になる過程にある医師です。研修を終えた後、専門領域の研修に進む医師は専攻医と呼ばれます。
一人前になるまでの過程
臨床医として独立して診療できるようになるまでには、複数の段階があります。
- 医学部卒業・医師国家試験合格 — 医師免許の取得
- 初期臨床研修(2年) — 複数科をローテーションする
- 専門研修(3〜5年程度) — 基本領域の専門医を目指す
- サブスペシャルティ領域 — さらに細分化された領域へ
専門医の制度そのものは専門医とは?で整理しています。
研究医との違い
研究医は2つに分かれる
研究医は、大きく基礎研究医と臨床研究医に分かれます。ここを分けずに「研究医」とまとめると、実態を見誤ります。
| 区分 | 主な勤務先 | 内容 | 患者診療 |
|---|---|---|---|
| 基礎研究医 | 大学・研究機関・企業 | 病気の原因、薬の作用、身体の仕組みの解明 | 原則なし |
| 臨床研究医 | 大学病院・病院 | 診療しながら治療法の改善、予防法の検討 | あり |
| 臨床医 | 病院・診療所 | 患者の診察・診断・治療 | 中心業務 |
基礎研究医と臨床医の距離は遠く、臨床研究医はその中間にあたります。「臨床か研究か」という二択に見える構図は、臨床研究医の存在を落としているために生じています。
臨床研究医コースという制度
2021年度から、臨床研究医コースという研修プログラムが新設されました。臨床研究医を養成することを目的とした制度です。
2024年度にはコース期間の短縮と修了要件の緩和が行われており、制度としても「両立しやすくする」方向に動いています。
近年は臨床と研究を両立できるよう支援する施設も増えており、大学病院での勤務がその環境を提供する形になっています。
どちらを選ぶかの判断軸
「やりがい」や「向き不向き」で語られがちな選択ですが、その場で自己判定できる条件に落とすと考えやすくなります。以下は順位づけではなく、条件の整理です。
臨床医を選ぶ
こういう条件なら——次に当てはまる場合。
- 目の前の患者の変化が、自分の仕事の手応えとして最も大きい
- 収入の安定性と、勤務地の選択肢の広さを重視する
- 論文執筆や研究費の獲得に、継続的な労力を割く見通しが立たない
臨床医は求人の総量が圧倒的に多く、地域も働き方も選べます。 常勤・非常勤の組み合わせ、開業という選択も含めて、キャリアの可変性が高い道です。
基礎研究医を選ぶ
こういう条件なら——次に当てはまる場合。
- 疾患のメカニズムそのものへの関心が、診療への関心を上回る
- 学位取得や留学を含めた長期の計画を立てられる環境がある
- 短期的な収入より、研究テーマの継続性を優先できる
成果が出るまでの時間が長く、収入面では臨床医より不利になりやすい点は前提として押さえる必要があります。一方で、一つの発見が診療全体を変える射程を持ちます。
臨床研究医(両立)を選ぶ
こういう条件なら——次に当てはまる場合。
- 診療の中で「なぜこうなるのか」という疑問が具体的に溜まっている
- 所属先に臨床研究の指導体制がある、または臨床研究医コースを持つ施設に移れる
- 診療と研究の時間配分を、上司と交渉できる立場にある
臨床で生まれた疑問を研究で解くという循環が回れば、どちらか一方より強い専門性になります。ただし両方の締め切りが同時に来るため、時間管理の難易度は最も高くなります。
どちらも今は決めなくてよい
こういう条件なら——初期研修中、または専門研修を始めたばかりの場合。
この時点で決める必要はありません。 基本領域の専門医を取得するまでの数年で、自分がどの手応えに反応するかが見えてきます。制度上も、専門医取得後に研究へ進む道は開かれています。
先に閉じてしまうことのコストのほうが大きい段階です。
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クリニック経営の視点から
診療所の院長・事務長にとって、この区分は採用と定着の話につながります。
研究志向のある医師を採用する場合
大学病院との兼務や、非常勤としての関わりを前提にした条件設計が現実的です。常勤にこだわると候補が狭まります。
非常勤医の給与水準はクリニックの非常勤医師の給与相場は?、採用手続きは非常勤医師採用時に必要な届出とは?を参照してください。
転職市場での位置づけ
臨床医の転職には明確な季節性があります。求人のピークと医師が動き出す時期はずれているため、医師の転職に最適な時期はいつ?で整理したサイクルを踏まえて募集時期を決めると、候補者と出会える確率が上がります。
よくある質問
Q. 臨床医から研究医に転向できますか?
できます。大学院への進学や、大学病院への異動が一般的な経路です。近年は臨床研究医コースのように、制度として両立を支援する枠組みも整ってきました。
Q. 研究医から臨床に戻れますか?
戻れます。ただし臨床から離れていた期間の長さが実務的な論点になります。専門医資格の更新要件を満たし続けられるかを、早い段階で確認しておく必要があります。
Q. 臨床医の年収は研究医より高いのですか?
一般に臨床医のほうが高くなりやすいですが、勤務先と役職で幅があります。診療科別の傾向については個別の記事で扱っています。基礎研究医は大学の給与体系に乗るため、年齢に対する伸びが緩やかになる傾向があります。
Q. 開業は臨床医のキャリアですか?
はい。開業は臨床医のキャリアの延長にあります。ただし診療能力とは別に、経営・労務・保険請求の知識が必要になります。診療報酬とは?から制度の基礎を押さえておくと、開業準備の見通しが立てやすくなります。
まとめ
臨床医とは、患者の診療に直接関わる医師です。研究医との対比で語られますが、実際には次の3点を押さえておく必要があります。
- 研究医は基礎と臨床に分かれる — 「臨床か研究か」の二択は、臨床研究医という中間を落としている
- 制度は両立を支援する方向にある — 臨床研究医コースは2021年度に新設、2024年度に要件が緩和された
- 初期の段階で閉じる必要はない — 基本領域の専門医を取るまでに、自分が反応する手応えが見えてくる
選択の軸は「向いているかどうか」ではなく、時間配分と収入の見通しを自分の生活の中でどう組めるかという条件の問題です。
特徴
対象規模
オプション機能
提供形態
診療科目
この記事は、時点の情報を元に作成しています。
