「専門医」という言葉は日常的に使われますが、その資格が何を保証しているのかを正確に説明できる人は多くありません。
かつては学会ごとに独自の基準で認定されており、名称も要件もばらばらでした。この状態を整理するために作られたのが新専門医制度です。そして2026年は、この制度で研修を始めた医師が初めて更新時期を迎える年にあたります。
本記事では専門医制度の構造を整理し、クリニックの採用や広告の実務で押さえるべき点までを扱います。
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専門医とは何か
一定の研修を修めた医師であることの証明
専門医とは、特定の診療領域について定められた研修を修了し、審査に合格した医師を指します。
医師免許が「医業を行える」ことの資格であるのに対し、専門医は「その領域で標準的な診療ができる」ことを第三者が確認した証明という位置づけです。
新専門医制度の成立
2018年度から、日本専門医機構による新しい認定制度が始まりました。
それ以前は、学会ごとに独自の認定を行っていたため、次のような課題がありました。
- 領域の切り方や名称が統一されていない
- 研修内容と審査の水準が学会間で揃わない
- 患者から見て、何を意味する資格なのか分かりにくい
新制度は、認定主体を機構に集約し、研修プログラムを標準化する方向で設計されています。
19の基本領域
必ずどれか1つを取る
新専門医制度では、19の基本領域のいずれかで専門医資格を取ることが必須とされました。
基本19領域は次の通りです。
| 分類 | 領域 |
|---|---|
| 内科系 | 内科、小児科、精神科、放射線科、臨床検査、病理 |
| 外科系 | 外科、整形外科、脳神経外科、形成外科、産婦人科、泌尿器科、眼科、耳鼻咽喉科 |
| 横断領域 | 救急科、麻酔科、リハビリテーション科、皮膚科、総合診療科 |
注目すべきは、総合診療科が基本領域として位置づけられた点です。臓器別に分化してきた専門医制度の中に、総合性を担う領域が制度として組み込まれました。この背景はプライマリケアとは?で扱っています。
サブスペシャルティ領域は二段階目
新専門医制度は二段階制です。
- 基本領域専門医 — 19領域のいずれかを取得
- サブスペシャルティ領域専門医 — 基本領域の取得後に選択
たとえば内科を基本領域として取得した後に、循環器・消化器・呼吸器といったサブスペシャルティへ進む形です。
基本領域を飛ばしてサブスペシャルティだけを取ることはできません。 ここが旧制度と大きく異なる点です。
専門医になるまでの流れ
研修の順序
- 初期臨床研修(2年) — 医師免許取得後、複数科をローテーション
- 専門研修(3〜5年程度) — 基本領域のプログラムに所属。この期間の医師が専攻医
- 試験・審査 — 各領域の基準に基づく認定
- サブスペシャルティ研修 — 必要に応じて
専攻医の期間中は、プログラムに定められた症例数や経験内容を満たすことが求められます。所属施設を移る場合、要件を継続して満たせるかの確認が必要です。
臨床と研究のどちらに軸足を置くかによって、この時期の過ごし方は変わります。判断軸は臨床医とは?で整理しています。
2026年は初回更新の年
2018年度に新制度で研修を開始した医師が、2026年に初めて更新時期を迎えます。
専門医資格は取得して終わりではなく、一定期間ごとの更新が前提です。診療実績、講習の受講、学術活動などが要件になります。
初回更新は制度の運用が固まる過程にあるため、機構および各領域の学会が示す最新の要件を確認する必要があります。この点は解説記事ではなく、原典に当たるべき部分です。
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クリニック実務での論点
採用要件として見るとき
常勤医の募集では、基本領域の専門医資格が前提条件になっているケースが少なくありません。
一方で、専門医資格の有無が診療の質を一意に決めるわけではありません。判断の実務としては、次のように分けて考えるほうが現実的です。
専門医資格を要件にすべき場合——標榜科と直結する診療を任せる、または施設基準や加算の要件に絡む場合。
資格より経験を見るべき場合——外来の一般診療が中心で、その医師の実際の診療経験が自院の患者層と合致している場合。資格の有無だけで候補を狭めると、地域によっては採用そのものが成立しません。
そもそも常勤にこだわらない場合——専門性の高い診療を週1日だけ入れたい、といった需要であれば非常勤枠のほうが合致します。給与相場はクリニックの非常勤医師の給与相場は?を参照してください。
採用の時期については医師の転職に最適な時期はいつ?で市場のサイクルを整理しています。
広告表示のルール
医療広告では、専門医資格の表示に制限があります。
広告可能な資格名は告示で定められており、すべての専門医資格が自由に掲示できるわけではありません。 ウェブサイトや看板に記載する前に、医療広告ガイドラインと告示の対象範囲を確認してください。
「日本一の専門医」のような優越性を示す表現は、資格の有無とは別に比較優良広告として禁止されています。
よくある質問
Q. 認定医と専門医はどう違いますか?
学会によって呼称の使い方が異なりますが、一般に認定医はより基礎的な段階、専門医はその上位として設計されているケースが多くあります。ただし統一された定義はないため、どの学会のどの資格かを個別に確認するしかありません。
Q. 旧制度で取得した専門医はどうなりますか?
移行の扱いは領域ごとに異なります。機構認定への切り替えが進む領域と、学会認定が併存している領域があります。 自身の領域について学会の案内を確認するのが確実です。
Q. 総合診療専門医はどんな医師ですか?
内科・小児科を中心に、整形外科・皮膚科・緩和ケアまで幅広い研修を受け、地域の健康問題に総合的に対応する専門医です。19の基本領域のひとつであり、専門分化した領域と並列に位置づけられています。
Q. 専門医を取らないという選択はありますか?
制度上、専門医資格がなくても医業は行えます。ただし常勤の求人条件や、一部の施設基準・加算の要件に影響します。 開業を前提にする場合でも、標榜科の説明力という観点では意味を持ちます。
まとめ
専門医とは、特定の領域で定められた研修を修了し、審査に合格した医師です。2018年度から日本専門医機構による新制度が始まり、次の構造に整理されました。
- 19の基本領域のいずれかが必須 — 総合診療科もその一つとして組み込まれた
- 二段階制 — 基本領域を取得してからサブスペシャルティへ。飛び級はできない
- 2026年が初回更新の年 — 更新要件は制度の運用が固まる過程にあり、機構と学会の最新情報を確認する必要がある
クリニックの実務では、採用要件として資格をどこまで求めるかと、広告で表示できる範囲の2点が具体的な論点になります。
参考
- 日本専門医機構「専門医制度」関連資料
- 厚生労働省「新たな専門医の仕組みについて」
- 一般社団法人日本医療・病院管理学会「新専門医制度」
- 厚生労働省「医療広告ガイドライン」
特徴
対象規模
オプション機能
提供形態
診療科目
この記事は、時点の情報を元に作成しています。
