診察結果を正しく記録するためには、診察中にリアルタイムでカルテを入力することが大切です。しかし、患者と目を合わせて話したり、患部をしっかり観察したりすることなく、カルテ画面ばかり見ていると、患者から不信感を持たせて当然です。そこで今回、カルテ画面ばかり見ている医師に対して、患者がどのような気持ちを持っているのかを、実際のアンケート結果から紹介するとともに、患者と目を合わせる時間を作る方法を解説していきます。
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「医師がパソコン画面ばかり見ていた」と書いた人が100人中11人
医師がカルテ画面ばかり見ていると、多くの患者は「なぜ自分と向き合って話さないのか」「ちゃんと患部を見ていないのではないか」との不満を抱きます。株式会社DONUTSが、2026年9月に実施した独自アンケートでも、100人中11人が「カルテ画面ばかり見ている医師に不満がある」とコメントしています。なお、同アンケートは、直近1~2年に、受診したクリニックに通うことを辞めた経験がある患者100人を対象としていたものです。
実際にどんな声が上がっていたのかを詳しくみていきましょう。
アンケート回答者の実際の記述4選
「医師がパソコン画面ばかり見ていた」との回答者が抱いている主な不満を、実際の回答から探っていきましょう。
目を合わせてくれなかった
- 「肌荒れが長引いて悩んでいたため皮膚科を受診したのですが担当した医師がパソコンの画面ばかりを見てこちらと目を合わせて話を聞いてくれませんでした。 症状や生活習慣について詳しく説明しようとしても“とりあえず薬を出しておきますね”とだけ言われ、診療自体も1分ほどで雑に終わらされてしまいました。 不安や疑問に全く寄り添って貰えない冷たい対応に強い不信感を抱いて二度と通いたくないと感じて別のクリニックへ変更しました」
医療の現場では、患者とのコミュニケーションが不可欠です。診察室に入って1:1で会話しているのに、一度も目が合わないとなると、「この医者は人として信用できない」と思われて当然です。
話を聞いてくれなかった
- 「発熱と強い倦怠感があったときに受診した際のことです。受付で体調の悪さを伝えたものの、スタッフの方には終始無表情で冷淡な対応をされて、非常に居心地が悪く感じました。また診察室に入っても、医師はこちらの顔を見ることもなくパソコンの画面ばかりを眺めていて、症状や不安に思っていることを説明しようとしても“ただの風邪ですね”と話を途中で遮られてしまいました。辛い体調の中で頼りにして受診したにもかかわらず、全く親身になってもらえず、不快感と大きな不信感だけが残る結果となりました」
終始、パソコンのほうを向いているどころか、患者の話に耳を傾けることなく、話も途中で遮っているようでは、患者離れは加速化してしまいます。
辛い気持ちに寄り添ってもらえなかった
- 「風邪気味で高熱と喉の強い痛みに悩まされて受診しましたが、担当した医師は顔もほとんど見ず、こちらの症状や辛さを説明している最中にも遮るようにカルテ画面ばかりを見ていました。質問をしても“薬を出しておけばいいから”と冷たくあしらわれ、こちらの不安な気持ちに全く寄り添ってもらえず非常に悲しい思いをしたため、二度と通うのをやめました」
医療機関を受診する患者の多くは、症状や病状の程度に関わらず、不安な気持ちを抱いています。なかには、医師からすると「たいしたことはない」と感じられる病状の患者もいるかもしれませんが、患者側が痛みや不安を抱えていることはしっかり理解して、寄り添うことが大切です。
患部をきちんと見てくれなかった結果、誤診だった
- 「足の膝下に湿疹ができた時に皮膚科に受診しました。 皮膚科なのである程度待ち時間は仕方ないんですが、先生が電子カルテ入力ばかりしてこちらを見ずに話を進めて、足の湿疹を見てくれたんですけど、乾燥ですねの一言。 膝下だけ乾燥なのがしっくりこなくて質問しても、乾燥だからと詳しく根拠を説明してくれなかった。 結局保湿剤だけだされて塗ってたけどよくなるわけもなく、痒みと痛みがあり膠原病内科に行ったらりんご病だと診断された。 医師の態度や説明が不十分だとそれだけで信頼感が下がるのに、誤診だったこともありもう行かないと決めました」
パソコン画面を見てばかりで、患者としっかり向き合っていない医師は、どこかで自分の診断に自信があるのかもしれません。「いつもと同じ薬を出しておけば問題ない」との思い込みから、誤った診断結果を出してしまうことがあり得ます。最悪の場合、命にも関わるということをしっかり頭に刻んでおきましょう。
これは態度の問題ではなく入力量の問題
アンケート回答者の声を見ると、多くの人は「医師の態度に問題がある」と感じるかもしれません。実際に、「患者の顔を見なくても診察はできる」「同じ症状を繰り返している場合、患部をきちんと確認する必要はない」と考えている医師もいなくはないでしょう。
しかし、それ以上に多い原因として考えられるのが、「電子カルテの入力に手一杯になっていて、患者の顔や患部をしっかり見る余裕がない」という医師側の事情です。
診察時間のうちカルテ入力が占める割合
実際に、診察時間のうちカルテ入力が占める割合はどの程度であるかというと、少々古いデータになりますが、2002年に公立病院の内科外来で実施された調査では、電子カルテを用いたカルテ操作時間は、診察時間5.7分中1.6分で、約28.1%とされています。
なお、紙カルテを使用した場合との比較結果は次の表の通りです。
| 項目 | 紙カルテ | 電子カルテ |
|---|---|---|
| 診察時間 | 4.7分 | 5.7分 |
| カルテ操作時間 | 1.0分 | 1.6分 |
| グラフ閲覧時間 | 0.1分 | 0.4分 |
| 問診時間 | 3.5分 | 3.8分 |
つまり、紙カルテを用いるケースと比べて、カルテ操作時間の割合が大きいということになります。
出典:日本プライマリ・ケア連合学会誌「日本国内の診察時間研究の現状―システマティックレビュー―」より「外来診療におけるテンプレート入力電子カルテと紙カルテの比較評価」
また、電子カルテ導入済の3つの病院を対象とした別の調査では、医師の間接的業務時間:198.7分/日のうち、電子カルテ操作に費やす時間は53.1分/日であることもわかっています。
なお、電子カルテ未導入の病院における、間接的業務時間:153.5分/日のうち診療録・伝票記載にかかる時間:16.3分と比べて、医師の負担が大きいという結果となっています。
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目を合わせる時間を作る4つの手段
医師の電子カルテ入力の負担を減らすためにはどうすればいいか、つまり、診察時間内に患者と目を合わせる時間を作るためにはどうすればいいかというと、主に次の4つの手段が考えられます。
テンプレートの整備
定型的な診療内容をテンプレート化して、入力時間を短縮する方法です。
電子カルテの「テンプレート」とは、診療科や疾患、診察内容に応じて、よく使う記録項目や文章をあらかじめ登録しておく機能です。
医師が診察のたびに同じ文章を一から入力する必要がなくなり、記録作業の効率化につながります。
具体的な方法は次の通りです。
-
疾患別の診療テンプレートを作成する
-
定型的な問診・診察所見を登録する
-
よく使用する処方・検査オーダーを整理する
-
SOAP形式の記録項目を標準化する
-
ショートカットや定型文登録を活用する
たとえば、生活習慣病の定期診察であれば、血圧・体重・服薬状況・生活習慣・検査結果などの確認項目をテンプレート化します。
こうしておけば、医師は患者ごとに異なる部分を追記することで、記録を作成しやすくなります。
注意点として、テンプレートを増やしすぎると、かえって選択や修正に時間がかかる場合があるので、実際の診療フローに合わせて、必要な項目に絞って整備することが重要です。
また、テンプレートの内容が患者の診療実態と一致しているかどうかを、医師が確認する必要があります。
音声入力
医師が話した内容を音声認識システムでテキスト化する方法です。
これによって、キーボード操作の負担を軽減して、診療記録の作成を効率化できる可能性があります。
近年は、一般的な音声入力システムに加えて、医療用語への対応や生成AIを活用した診療記録作成支援なども登場しています。
具体的な方法は次の通りです。
- ① 電子カルテの音声入力機能を使う
医師が所見や診療内容を読み上げて、テキストとして入力します。
たとえば、「血圧は安定。服薬継続。次回3カ月後に受診」と発話すると、認識された文章をカルテに入力できます。
- ② AIによる診療記録作成支援を活用する
患者と医師の会話をもとに、診療記録の下書きを作成する仕組みです。
一般的な流れは以下のとおりです。
診察・会話 → 音声認識 → AIによる記録整理 → 医師が確認・修正 → カルテ登録
医師が文章を一から作成する負担を減らせる可能性があります。
なお、導入時には次の点に注意する必要があります。
-
音声認識の誤変換
-
医療用語の認識精度
-
患者の同意やプライバシーへの配慮
-
音声データの保存・管理
-
医師による記録内容の最終確認
AIが作成した記録は、医師が内容を確認して、必要に応じて修正してから確定する運用が重要です。
出典:カルテ入力時間を8割削減 — AI音声入力が変えるクリニックの1日
スタッフへの入力分担
電子カルテ入力のすべてを医師が担当するのではなく、業務内容に応じて看護師や医療事務などのスタッフに分担する方法です。
医師がおこなうべき医学的判断と、補助スタッフが担当できる事務的・補助的業務を整理することで、医師の入力負担軽減を目指します。
たとえば、必要業務を次のように分担します。
| 業務 | 分担例 |
|---|---|
| 事前問診の入力 | 看護師・医療事務 |
| バイタルサインの入力 | 看護師など |
| 既往歴・服薬情報の整理 | 担当スタッフ |
| 診察中の記録補助 | 医師事務作業補助者など |
| 検査結果の確認・整理 | 担当スタッフ |
| 医師の診療記録作成補助 | 医師事務作業補助者など |
医師事務作業補助者の活用について
医師事務作業補助者は、医師の指示のもとで、診療に関する事務作業を補助する職種です。
たとえば、医師の診察内容を踏まえた診療記録の入力補助や、診断書などの文書作成補助といった業務が考えられます。
ただし、医学的判断や診療録への記載内容の最終的な責任を伴う業務については、関係法令や院内の権限・確認体制に基づいて分担する必要があります。
そのため、まずはスタッフに任せられる範囲を明確にして、医師による確認を組み込むことが重要です。
出典:電子カルテの代行入力が認められている「医師事務作業補助者」の仕事内容を解説
出典:病棟クラークとは?医師事務作業補助者との違いと、クリニックで置くべきかの判断
診察の前後に入力を寄せる
診察中にカルテ入力を断続的におこなうのではなく、可能な範囲で入力作業を診察前後にまとめる方法です。
患者の話を聞きながら頻繁にキーボードを操作するというやりかたを回避することによって、患者とのコミュニケーションを確保することを目指します。
具体的な方法は次の通りです。
- ① 診察前に情報を整理する
診察前に、以下の情報について確認・整理します。
-
前回の診療記録
-
検査結果
-
服薬状況
-
患者の主訴や事前問診
-
今回確認すべき事項
あらかじめ必要な情報を把握することで、診察中の入力や情報検索を効率化できる可能性があります。
- ② 診察中は患者との対話を優先する
患者の話を聞く時間と、カルテ入力の時間を適切に整理します。たとえば、診察の冒頭では患者の訴えを聞くことに集中して、要点を整理したうえで入力する方法が考えられます。
ただし、診察中に必要な記録やオーダーを後回しにすることで、記載漏れや確認漏れが生じないように注意することが必要です。
- ③ 診察後に記録を完成させる
診察終了後に、所見や治療方針を整理して記録を完成させます。
ただし、診察件数が多い医療機関では、診察後の入力が蓄積して、時間外労働につながる可能性もあります。
「診察後に寄せればよい」と一律に考えるのではなく、入力のタイミングと業務量のバランスを検討することが大切です。
よくある質問
医師が診察中、カルテ画面ばかりみていることに関連する内容の、よくある質問とその答えをみていきましょう。
Q. カルテ入力に集中すると、患者とのコミュニケーションにどのような影響がありますか?
A. 患者の話を聞く時間や、表情・反応を把握する機会に影響する可能性があります。
診察中に入力操作が頻繁に発生すると、医師が患者の表情や声の変化を捉えにくくなったり、患者が話しかけるタイミングをためらったりする場合があります。
特に、患者が症状以外の不安や悩みを伝えようとしているときには、医師の反応や傾聴が重要です。
Q. 医師がカルテ入力に集中したい場合、看護師やスタッフにどういうサポートを頼めばいいですか?
A. 医師がカルテ入力に集中しているとき、看護師やスタッフは、患者の様子を把握して、必要に応じて医師と患者のコミュニケーションを補助することが可能です。
たとえば、看護師やスタッフが患者の疑問や不安を把握して、医師に共有する方法があります。
また、診察前の情報整理や入力補助など、院内の業務分担に応じたサポートをおこなってもらうことも考えられます。
ただし、スタッフが担える業務の範囲は、資格・権限・院内体制などによって異なります。
医師の業務を補助する際には、患者情報の正確性や個人情報保護にも配慮する必要があります。
Q. 電子カルテの操作を減らすと、診察の質は向上しますか?
A. 患者との対話や診療に充てられる時間を確保できる可能性がありますが、操作を減らすだけで、必ずしも診療の質が向上するとは限りません。
電子カルテは、診療記録の保存や情報共有、検査・処方などに欠かせない役割を担っています。
そのため、操作を一律に減らすのではなく、不要な入力や重複作業を見直して、必要な記録を適切に残すことが重要です。
たとえば、テンプレートの整備や音声入力、事前問診の活用などによって、医師の負担軽減と患者とのコミュニケーションの両立を目指せます。
改善効果を検証する際には、入力時間だけでなく、患者満足度や記録の正確性、医師の負担なども確認するとよいでしょう。
Q. 電子カルテを乗り換えることで、カルテ入力がスムーズになることはありますか?
A. 電子カルテを変更することで、カルテ入力が速くなり、医師の入力負担を軽減できる可能性があります。ただし、入力速度が向上するかどうかは、現在の電子カルテで何に時間がかかっているか、変更先のシステムにどのような機能があるかによって異なります。
たとえば、使用中の電子カルテの画面構成や入力方法、ボタンの配置などが自分に合っていない仕様の場合、操作性が改善される可能性は大きいです。診療科に適した入力画面である場合や、よく使う項目をまとめた画面が用意されている場合などは、必要な情報を探す手間やクリック操作を減らせる可能性が高いでしょう。
また、電子カルテによっては、疾患別のテンプレートや定型文、ショートカットなどの機能が充実しています。よく使う診療記録を登録しておけば、毎回、同じ内容を入力する手間を減らせます。ただし、既存システムでも同様の機能を使える場合があるため、乗り換え前に現在の設定を見直すことも大切です。
音声入力やAIによる診療記録作成支援に対応した電子カルテを選ぶと、キーボード入力の負担軽減が期待できます。たとえば、診察中の会話から診療記録の下書きを作成して、医師が確認・修正して確定する仕組みです。ただし、AIによる記録作成支援の導入効果は、製品の性能や診療内容、運用方法によって異なります。
ただし、新しいシステムを導入しても、操作方法を習得するまでに時間がかかったり、従来の業務フローとの相性が悪かったりすると、かえって負担が増える場合があります。
そのため、導入前には以下の点を確認することが大切です。
-
医師が実際に操作しやすいか(実際に試用してみる)
-
入力画面やテンプレートをカスタマイズできるか
-
音声入力・AI機能に対応しているか
-
既存の検査・予約システムと連携できるか
-
導入後のサポート体制が整っているか
電子カルテ入力の効率化は、患者が安心して話せる診療環境を整える観点から大切
電子カルテ入力の効率化は、医師の業務負担を軽減するだけでなく、患者とのコミュニケーションを充実させるうえでも重要です。診察中に医師がカルテ画面ばかり見ていると、患者は「自分の話をきちんと聞いてもらえているのか」「症状や不安な気持ちを理解してくれているのか」と不満・不安を感じることがあります。もちろん、診療記録の作成や検査結果の確認は、適切な医療を提供するために欠かせません。しかし、入力作業に集中するあまり、患者との対話や表情の変化を見逃すことは避けたいものです。テンプレートや音声入力の活用、スタッフへの入力補助の分担、診察前後の情報整理などによって、入力負担を軽減できる可能性があります。大切なのは、電子カルテの操作効率だけを追求するのではなく、患者が安心して話せる時間と環境を確保することです。こうした取り組みが、患者との信頼関係を築き、継続的な通院につながる診療体制づくりに役立ちます。
特徴
対象規模
オプション機能
提供形態
診療科目
この記事は、時点の情報を元に作成しています。
