「ハローワークから、この用紙を先生に書いてもらうよう言われた」。退職した患者が受付に持ってくる書類の一つが、就労可能証明書です。雇用保険の基本手当(いわゆる失業保険)を受けるには、働く意思と能力があることが前提になります。そのため病気やけがで退職した人については、ハローワークが医師の証明で就労の可否を確認します。
この記事では、ハローワークの様式に沿って医師欄の記入例を示し、診断書や傷病手当金の意見書との違い、文書料の決め方、受付での受け方を整理します。就労可能かどうかの医学的な判断基準そのものは扱いません。
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就労可能証明書を求められる場面と様式
就労可能証明書は、全国で統一された様式があるわけではありません。都道府県労働局やハローワークごとに様式を作っており、名称も「就労可能証明書」「就労(就職)可否証明書」「病状証明書」などと分かれています。患者が持参した用紙をそのまま使うのが基本です。
求められる場面は、おもに次の2つです。
| 場面 | ハローワークが確認したいこと | 医師欄で「可否」をどう書くことになるか |
|---|---|---|
| 基本手当の受給を申し込む | 求職の申込み時点で、週20時間以上働ける状態か | 証明日時点で「就労可能」 |
| 受給期間の延長を申し出る | 病気・けがで引き続き30日以上働けない状態か | 証明日時点で「就労不可能」と、その見込み期間 |
| 離職理由を確認する | 退職日の時点で働き続けることができたか | 退職日時点の可否 |
受給期間の延長は、雇用保険法第20条に定められています。本来の受給期間内に、病気などで引き続き30日以上職業に就けない場合、申し出によってその日数を加算でき、加算後の期間は最長4年です。
ある労働局の様式の案内には、受給期間延長の場合は「離職票の離職年月日の翌日から30日以上経過した日」以降の日付で証明する必要がある、と書かれています。証明日が早すぎると差し戻しになるので、受給期間延長の用紙を受けたときは、証明日の決め方を患者に確認しておきます。
就労可能証明書の記入例(項目ごとの書き方)
労働局の様式はおおむね次の項目で構成されています。ここでは、うつ状態で休職後に退職し、現在は通院で安定している患者が、基本手当の受給を申し込むケースを例にします。
| 項目 | 記入例 | 書き方の要点 |
|---|---|---|
| 傷病の名称 | うつ状態 | カルテの傷病名と一致させる |
| 初診年月日 | 令和7年11月10日 | 当院での初診日。前医がある場合は当院の初診日を書く |
| 現在の状態 | 継続治療中 | 様式の選択肢(継続治療中・治癒または寛解・転医・中止)から選ぶ |
| 退職日時点の就労の可否 | 困難であったと思われる | 様式によっては「退職日(離職票の離職年月日)において週20時間以上の就労が可能であったか」を問う。診療録にある当時の状態で判断する |
| 証明日時点の就労の可否 | 軽労働や短時間(週20時間以上)であれば就労可能/令和8年9月1日以降 | 可能になった日付の欄がある様式では、その日付を入れる |
| 就労可能な具体的な条件 | 残業のない日勤で週30時間程度。対人折衝の多い業務は当面避けることが望ましい | 時間・勤務帯・業務内容・配慮事項を、職業紹介に使える具体さで書く |
| 就労不可能と認められる期間 | なし | 受給期間延長の場合は、期間を「令和○年○月○日~継続中」などと書く |
| 傷病手当金・休業補償給付の証明の有無 | 有(終了)令和8年2月1日~令和8年8月31日 | 当院で傷病手当金の意見書を書いていれば、その期間と整合させる |
| 証明日・医療機関名・医師氏名 | 令和8年9月25日 | 受給期間延長では、上の30日以上経過の条件に注意 |
「就労可能な具体的な条件」は、空欄や「特になし」で出すと、ハローワークから問い合わせが来やすい欄です。ハローワークはこの欄を職業紹介の条件として使います。「軽作業なら可」だけでなく、時間の上限や避けたい業務まで書くと、患者が紹介先で困りにくくなります。
もう一つ注意したいのが、傷病手当金との整合です。傷病手当金は「労務不能」であることが支給の条件なので、同じ期間を就労可能と証明すると内容が食い違います。傷病手当金の意見書を当院で書いている場合は、その終了日と「就労可能となった日」の関係を確認してから記入します。傷病手当金の意見書の書き方は「傷病手当金申請書 医師記入欄(第4面)の書き方」で整理しています。
就労可能証明書と診断書・傷病手当金の意見書の違い
「働けるかどうか」を医師が書く書類はほかにもあります。取り違えると患者が二度手間になるため、提出先と目的で見分けます。
| 書類 | 提出先 | 目的 | 様式 |
|---|---|---|---|
| 就労可能証明書(就労可否証明書・病状証明書) | ハローワーク | 基本手当の受給・受給期間延長・離職理由の確認 | 労働局・ハローワークの様式 |
| 復職可能の診断書 | 勤務先 | 休職からの職場復帰の判断材料 | 医療機関の診断書様式 |
| 傷病手当金支給申請書の医師記入欄 | 健康保険(協会けんぽ・健康保険組合) | 労務不能であった期間の証明 | 保険者の様式 |
| 両立支援の情報提供文書 | 勤務先の産業医等 | 治療と就労の両立に必要な配慮の情報提供 | 別紙様式49など |
勤務先に出す復職の診断書と、ハローワークに出す就労可能証明書は、どちらも「働けるか」を書くので混同されがちです。前者は元の職場で元の業務に戻れるかが問われ、後者は週20時間以上の何らかの仕事に就けるかが問われます。
厚生労働省の「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」は、主治医の判断について「日常生活における病状の回復程度によって職場復帰の可能性を判断していることが多く、必ずしも職場で求められる業務遂行能力まで回復しているとの判断とは限りません」としています。復職の最終判断は事業者側で行うもので、主治医の書類はその材料という位置づけです。勤務先への復職手続きの流れは「復職とは?休職・産休からの職場復帰で、クリニックが決めておく手順と書類」も参考になります。
なお、保育所の入所手続きで使う「就労証明書」は勤務先が記入する書類で、医師が書くものではありません。名前が似ているため、受付で用紙を確認すると取り違えを防げます。
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就労可能証明書の文書料の決め方
就労可能証明書の作成料は、保険診療ではなく自費で徴収します。厚生労働省の通知「療養の給付と直接関係ないサービス等の取扱いについて」(令和8年3月27日保医発0327第7号で一部改正)は、費用を徴収できる例として「公的保険給付とは関係のない文書の発行に係る費用」を挙げ、その中に証明書代を含めています。
同じ通知は、自費で徴収するときの手続きを定めています。
| 手続き | 内容 |
|---|---|
| 掲示 | 受付窓口や待合室など見やすい場所に、内容と料金を分かりやすく掲示する |
| ウェブ掲載 | 掲示事項は原則としてウェブサイトにも掲載する(自ら管理するホームページ等がない場合を除く) |
| 同意 | 内容と料金を明示した文書に患者の署名を受けて同意を確認する(包括的な同意書でも可) |
| 領収証 | 他の費用と区別した、内容の分かる領収証を発行する |
| 名目 | 「雑費」などの曖昧な名目での徴収は認められない |
金額は法令で決まっておらず、各医療機関が決めます。通知が求めているのは「社会的にみて妥当」な金額であることです。院内のほかの文書(診断書・各種証明書)と並べて、記入量に見合う金額を料金表に載せておくのが実務的です。
1つだけ例外があります。療養・就労両立支援指導料(B001-9、初回850点・2回目以降500点)を算定する月は、産業医等への情報提供文書の作成が指導料に含まれるため、その文書の発行費用を別に自費で徴収できません(留意事項通知B001-9(5))。この扱いは勤務先の産業医等に出す文書が対象で、ハローワーク向けの就労可能証明書とは別のものですが、同じ患者に両方を出すときは、どの書類に文書料をかけるかを整理しておきます。
就労可能証明書を受付で受けるときの確認事項
受付で用紙を預かるときは、次の4点を確認しておくと、書き直しや差し戻しが減ります。
- 提出先と目的。基本手当の受給か、受給期間の延長か。可否の書き方と証明日が変わる
- 退職日。離職票の離職年月日。退職日時点の可否欄と、受給期間延長の証明日の基準になる
- 当院での受診歴。医師法第20条は、自ら診察しないで診断書を交付することを禁じている。退職日時点の状態を当院で診ていない場合は、その旨を医師に伝えて判断してもらう
- 期限と文書料。ハローワークへの提出期限と、料金・受け取り方法を伝え、同意書を受ける
医師法第19条第2項は、診察をした医師は診断書の交付を求められた場合、正当な事由がなければ拒んではならないと定めています。「当院では書かない」と一律に断るのではなく、診察の事実に基づいて書ける範囲を医師が判断する流れにしておくと、患者とのトラブルになりにくくなります。
電子カルテの文書作成機能に、よく使う文書の雛形と料金を登録しておくと、受付から作成・会計までの流れがそろいます。
よくある質問
就労可能証明書に決まった様式はあるか
全国共通の様式はなく、都道府県労働局やハローワークごとに様式があります。患者がハローワークで受け取った用紙、または労働局のウェブサイトからダウンロードした用紙を使います。医療機関の診断書様式で代えられるかは、提出先のハローワークに確認してもらいます。
退職前に受診していない場合、退職日時点の可否は書けるか
退職日の時点で当院が診察していなければ、その時点の状態を医師が確認した事実はありません。医師法第20条は自ら診察しないで診断書を交付することを禁じています。本人の申告に基づくのであれば、その旨を書くか、欄を空けてハローワークに相談してもらうなど、医師の判断で扱いを決めます。
文書料は保険診療の一部負担金と一緒に請求してよいか
同じ日に会計することはできますが、領収証では保険診療分と区別し、文書料として内容が分かるように記載します。通知で、他の費用と区別した内容の分かる領収証を発行するよう求められています。
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まとめ
就労可能証明書は、ハローワークが基本手当の受給や受給期間の延長を判断するために求める書類です。様式は労働局やハローワークごとに異なり、医師欄では傷病名・初診日・退職日時点と証明日時点の就労の可否・就労できる具体的な条件を書きます。
受給期間延長では証明日の条件があり、傷病手当金の証明期間とも整合させる必要があります。文書料は自費で、掲示・同意・区分した領収証の手続きが通知で定められています。受付で提出先・退職日・受診歴・文書料の4点を確認してから医師に回すと、書き直しを防げます。
参考
- 雇用保険法(昭和49年法律第116号)第20条 https://laws.e-gov.go.jp/law/349AC0000000116
- 医師法(昭和23年法律第201号)第19条・第20条 https://laws.e-gov.go.jp/law/323AC0000000201
- 岩手労働局「就労(就職)可否証明書」 https://jsite.mhlw.go.jp/iwate-roudoukyoku/content/contents/002425726.pdf
- 神奈川労働局(ハローワーク)「病状証明書」 https://jsite.mhlw.go.jp/kanagawa-hellowork/content/contents/002162443.pdf
- 厚生労働省「『療養の給付と直接関係ないサービス等の取扱いについて』の一部改正について」(令和8年3月27日保医発0327第7号) https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001707281.pdf
- 厚生労働省「診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について」別添1 医科診療報酬点数表に関する事項(B001-9) https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001732089.pdf
- 厚生労働省・中央労働災害防止協会「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」 https://www.mhlw.go.jp/content/000561013.pdf
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この記事は、時点の情報を元に作成しています。
