カロナールやプロペトのように毎日のように処方する薬ほど、レセプトの傷病名との対応は確かめるのが後回しになりがちです。審査で見られるのは、処方した薬の効能・効果と、傷病名欄に書かれた傷病名が適応上つながっているかです。
この記事は、外来のレセプト点検を担当する医療事務の方と、点検結果を確認する院長に向けたものです。よく使う6つの薬について添付文書の効能・効果を並べ、傷病名欄のどこを見ればよいか、記載要領で傷病名の記載を省略できるのはどこまでかを整理します。
レセプトに合わせて傷病名を考える方法は扱いません。傷病名は医師の診断にもとづいて診療録に書かれるものです。点検で見つかった食い違いは、診療録と医師に戻して確かめます。処方してよいか、用量が適切かといった治療の判断も扱いません。
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カロナールの病名をレセプトで点検する前提は「傷病名は診療録から転記するもの」
レセプトの傷病名欄は、診療録に書かれた傷病名を写す欄です。記載要領(令和8年3月27日保医発0327第2号)は、傷病名には原則として傷病名コードに載っている名称を使い、主傷病・副傷病の順に書くよう定めています。
点検で処方と傷病名がつながらないとき、原因は次の3つのどれかです。
| 原因 | よくある場面 | 確かめること |
|---|---|---|
| 転記していない | 医師は診療録に診断を書いているが、レセプトの傷病名欄に反映されていない | 診療録の傷病名と、レセコンの病名登録を見比べる |
| 記載を省略できる範囲 | 安価な薬で、ほかの傷病名から投与の原因が類推できる | 記載要領の省略の条件に当たるかを見る(次の節) |
| 医師の判断による処方 | 診療録の診断と効能・効果の対応を、事務からは判断できない | 医師に処方の意図と診療録の記載を確かめる |
事務がレセプトの傷病名欄だけを書き換えて、診療録と食い違う状態にすることはしません。診療録の記載とレセプトがずれていると、個別指導などで診療録を確認されたときに説明できなくなります。
傷病名の記載を省略できる範囲は記載要領の「175円以下」
記載要領は、薬剤の投与の原因となった傷病名を書かなくてよい場合として、次の条件を定めています。
- 薬剤料の所定単位当たりの薬価が175円以下の薬剤であること
- 健胃消化剤や鎮咳剤などのように、記載したほかの傷病名から、その薬を使った原因となる傷病の発症が類推できること
- ただし、強心剤や糖尿病薬などは、この省略の対象にならない
この3つを満たすときは、その薬のためだけの傷病名を書く必要はありません。たとえば上気道炎の患者に安価な鎮咳剤を出した場合、傷病名欄の上気道炎から咳の原因が類推できます。
逆に言えば、175円を超える薬や、ほかの傷病名から原因が読めない薬は、省略の対象になりません。所定単位当たりの薬価が175円以下かどうかは、1剤1日分などの単位で薬価基準から計算します。迷う場合は、省略できない前提で点検するほうが安全です。
カロナールなど6つの薬の効能と傷病名の対応表
PMDAの添付文書に載っている効能・効果と、レセプトで見るところを並べます。効能・効果は要約です。正確な文言は、自院で使っている品目の添付文書で確かめてください。
| 薬剤 | 添付文書の効能・効果(要約) | レセプトで見るところ |
|---|---|---|
| カロナール錠 | 各種疾患・症状の鎮痛/急性上気道炎(急性気管支炎を伴うものを含む)の解熱・鎮痛/小児科領域の解熱・鎮痛 | 鎮痛か解熱か。成人の解熱目的なら、傷病名欄から急性上気道炎とのつながりが読めるか |
| プロペト | 眼科用軟膏基剤・一般軟膏基剤として調剤に用いる。皮膚保護剤として用いる | 単独で出しているとき、保護の対象となる皮膚の状態が傷病名欄から読めるか |
| ビオフェルミンR錠 | 下記の抗生物質・化学療法剤投与時の腸内菌叢の異常による諸症状の改善(ペニシリン系、セファロスポリン系、アミノグリコシド系、マクロライド系、テトラサイクリン系、ナリジクス酸) | 同じ処方に、列挙された系統の抗菌薬があるか |
| ミヤBM錠・細粒 | 腸内菌叢の異常による諸症状の改善 | 傷病名欄から腸内菌叢の異常による症状が読めるか |
| シナール配合錠 | ビタミン類の需要が増大し食事からの摂取が不十分な際の補給(消耗性疾患、妊産婦、授乳婦など)/炎症後の色素沈着 | ビタミン剤の算定の要件と、必要と判断した趣旨の記載(次の節) |
| ゲンタシン軟膏 | 表在性皮膚感染症、慢性膿皮症、びらん・潰瘍の二次感染 | 傷病名欄に、皮膚の感染症として読める傷病名があるか |
見比べるときに迷いやすいのは、カロナールとビオフェルミンRです。
カロナールの解熱は、効能・効果上「急性上気道炎」と「小児科領域」に限られています。鎮痛は「各種疾患及び症状」と幅広く書かれています。同じカロナールでも、成人に解熱目的で出しているのか、痛みに出しているのかで、傷病名欄で見るべきところが変わります。
ビオフェルミンRは、抗菌薬と一緒に使う前提の効能です。抗菌薬の処方が終わったあとも同じ処方を続けている場合や、列挙されていない系統の抗菌薬と一緒に出している場合は、医師に処方の意図を確かめます。同じ整腸剤でも、ミヤBMは抗菌薬の有無を効能の条件にしていません。
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シナールはカロナールと違いビタミン剤の算定の要件がかかる
シナールはビタミンCを含む配合剤なので、傷病名との対応とは別に、留意事項通知のビタミン剤の取扱いがかかります。
ビタミン剤の薬剤料は、医師が投与が有効と判断し、薬事承認の内容に従って適正に投与した場合に限って算定できます。通知は、ビタミンの欠乏や代謝障害が明らかで食事から摂れない場合などを例に挙げています。算定するときは、必要かつ有効と判断した趣旨を、診療録とレセプトに具体的に書く必要があります。病名から必要性と有効性が判断できる場合は、レセプトへの趣旨の記載は要りません。
コメントの選び方や文例はビタミン剤のレセプトコメントで整理しています。
カロナールの病名とレセプトがつながらないときに確かめる順番
点検で食い違いを見つけたら、次の順で確かめます。
- 診療録に、その処方の原因となる傷病名が書かれているか。書かれていれば、レセコンの病名登録への転記していなかった分を直す
- 診療録にない場合、記載要領の省略の範囲(175円以下で、ほかの傷病名から類推できる)に当たるかを見る
- どちらでもない場合は、医師に処方の意図を確かめる。医師が診療録に追記するか、処方を見直すかは医師が判断する
- 医師の判断で効能・効果の範囲と異なる使い方をしている場合は、審査でどう扱われるかを踏まえて、摘要欄に事情を書くかどうかを医師と決める
この順番を守ると、事務の判断で傷病名が増える状態を避けられます。点検の記録は「何を見つけ、誰に確かめ、どう直したか」の形で残しておくと、翌月以降に同じ食い違いを繰り返しません。
傷病名との対応の確認を毎月の作業にしない仕組み
6つの薬はどれも処方の頻度が高く、毎月レセプトを1枚ずつ見ていくと時間がかかります。電子カルテやレセコンの機能で、処方した薬と傷病名の組み合わせを確かめる仕組みを使える場合は、そちらに寄せるほうが確実です。
- 処方セットに、よく使う組み合わせ(ビオフェルミンRと抗菌薬など)をまとめて登録しておく
- 医師が診療録に診断を書いた時点で病名登録されるよう、入力の流れを決める
- 審査支払機関が公開しているコンピュータチェックの対象事例を、点検項目の見直しに使う
審査で返戻された内容は、自院の点検項目に足していきます。点検の観点そのものはレセプトの見方で欄ごとに整理しています。
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よくある質問
カロナールを頓服で処方するときも傷病名の点検は必要ですか
頓服でも、処方した薬の効能・効果と傷病名欄のつながりは同じように見られます。鎮痛か解熱かで、見るべき傷病名が変わる点も同じです。
プロペトを保湿のために出すとき、傷病名欄には何が必要ですか
プロペトの効能・効果は軟膏基剤と皮膚保護剤です。どの皮膚の状態に対して保護剤として使っているかが傷病名欄から読めるかを見ます。読めない場合は、診療録の記載を確かめ、医師に戻します。
後発医薬品を使っている場合も同じ対応表で見てよいですか
後発医薬品は、先発医薬品と効能・効果が異なる品目もあります。自院で採用している品目の添付文書で効能・効果を確かめ、対応表を自院用に作り直すのが確実です。
まとめ
カロナールなどの薬とレセプトの傷病名は、添付文書の効能・効果と見比べて点検します。記載を省略できるのは、175円以下でほかの傷病名から原因が類推できる薬だけです。つながらないときは、転記の抜け、省略の範囲、医師の判断の順に確かめ、事務がレセプトの傷病名だけを書き換えることはしません。
参考
- 厚生労働省「『診療報酬請求書等の記載要領等について』等の一部改正について」(令和8年3月27日保医発0327第2号) https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001757373.pdf
- 厚生労働省「診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について(通知)」(令和8年3月5日保医発0305第6号)医科点数表 https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001757385.pdf
- PMDA「カロナール錠200/カロナール錠300/カロナール錠500」添付文書 https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/ResultDataSetPDF/172190_1141007F1063_5_07
- PMDA「プロペト」添付文書 https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/ResultDataSetPDF/730119_7121703X1330_1_11
- PMDA「ビオフェルミンR錠」添付文書 https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/ResultDataSetPDF/650006_2316004F1020_1_03
- PMDA「ミヤBM細粒/ミヤBM錠」添付文書 https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/ResultDataSetPDF/750144_2316009C1026_1_07
- PMDA「シナール配合錠/シナール配合顆粒」添付文書 https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/ResultDataSetPDF/343018_3179115D1096_2_03
- PMDA「ゲンタシン軟膏0.1%/ゲンタシンクリーム0.1%」添付文書 https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/ResultDataSetPDF/400186_2634710M1077_2_05
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診療科目
この記事は、2026年10月時点の情報を元に作成しています。
