2024年4月から、レセプトの請求はオンライン請求が基本になりました。それまで紙レセプトや光ディスクで請求していた医療機関も、一定の場合を除いてオンライン請求へ移ることが求められています。
それでも、「先代の院長から引き継いだ診療所がずっと紙で出している」「手書きのまま続けたいが、何か届出が要るのか」という相談は今もあります。紙で続けられるかどうかは、院長の気持ちではなく、かつて届け出た類型に当てはまるかで決まります。
この記事は、紙レセプトで請求している、またはこれから請求方法を見直すクリニックの院長と医療事務の方に向けて、紙で続けられる条件、紙で出すときの手順、オンライン請求へ移る段取りをまとめたものです。歯科・薬局の細かな取扱いや、労災・自賠責のレセプトは扱いません。
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紙レセプトの請求は2024年度から何が変わったか
厚生労働省は2023年に請求の省令(療養の給付及び公費負担医療に関する費用の請求に関する命令)を改正し、2024年4月1日からレセプトの請求方法の取扱いを変えました。要点は次の3つです。
| 項目 | 2024年3月まで | 2024年4月以降 |
|---|---|---|
| 基本の請求方法 | オンライン請求・光ディスク等・紙が併存 | オンライン請求が基本 |
| 紙レセプトの新規適用 | 手書き請求(レセコン未使用)なら届け出て始められた。高齢の医師等の類型は、すでに新規適用がなかった | 新規適用は終了 |
| 紙で続けるとき | かつての届出のまま | 改めて「紙レセプト請求が継続できる場合」に当てはまる旨の届出(猶予届出)が必要 |
つまり、2024年4月以降に紙で出しているのは、期限までに猶予届出を出し、かつ当初の要件をいまも満たしている医療機関に限られます。届出をしていないのに紙で出し続けている場合は、まず所在地の支払基金(社会保険診療報酬支払基金)と国保連合会に確認してください。
紙レセプトで請求を続けられる2つの場合の判定表
厚生労働省の案内では、2024年4月以降も紙レセプト請求を続けられるのは、かつて届け出た類型に当てはまる場合だけです。
| 類型 | 当てはまる条件 | 自院が当てはまるかの確かめ方 |
|---|---|---|
| 1 レセコンを使っていない(手書き請求) | レセプトを手書きで作っている | レセコンや電子カルテのレセプト機能を一切使っていない |
| 2 常勤の医師等が高齢 | 常勤の医師等のうち最も若い人の生年月日が、基準日以前 | レセコンを使っている医科診療所は1945年7月1日以前、レセコンを使っていない診療所は1946年4月1日以前 |
どちらにも当てはまらない場合は、次の節の個別の例外に当たらない限り、紙のまま続けることはできません。院長が交代して若い医師が常勤になった、レセコンを入れたといった変化があれば、類型から外れている可能性があります。
迷いやすいのは次の2つです。
- 手書きだが会計だけレセコンを使っている場合は、レセプトを機械で作っているなら類型1には当たりません。どこまでを「レセコンを使っている」と見るかは、支払基金・国保連合会に確かめてください。
- 高齢の院長に加えて若い非常勤医がいる場合、類型2は「常勤の医師等」のうち最も若い人で判定します。非常勤医が増えただけなら、判定の対象外です。
類型のほかに紙レセプトが認められる個別の例外
紙レセプトを続けられるのは、上の2つの類型だけではありません。2023年12月の通知(保発1226第4号)は、請求命令附則第4条第5項にもとづき、オンライン請求が難しい次の事情があると個別に認められた医療機関は、あらかじめ届け出れば紙(または光ディスク等)で請求できるとしています。
| 事情 | 当てはまる場合 | 届出に添えるもの |
|---|---|---|
| 回線の障害 | 通信回線の機能に障害が起きている | 障害が起きた事実を確かめられる書類(事業者の証明など) |
| 改築工事中・臨時の施設 | 改築工事中の施設や臨時の施設で診療している | 工事や臨時施設の契約書・工程表の写しなど |
| 廃止・休止の計画 | おおむね1年程度の間に廃止・休止することが具体的に計画されている(時期が決まっていない、数年後の予定は当たらない) | 廃止・休止の計画がわかる資料 |
| その他特に困難な事情 | 上のどれにも当たらないが、オンライン請求が特に難しいと認められる | 困難な事情の内容がわかる資料 |
届出は様式第3号(請求命令附則第4条第5項による猶予届出書)で、都道府県の支払基金と国保連合会の両方に出します。特例を受けたい月の請求期限の1か月前までに出すのが原則です。閉院や承継を1年以内に具体的に予定している診療所は、この例外に当たるかを確かめる価値があります。
紙レセプトで請求を続けるときに要る届出
紙で続ける医療機関は、猶予届出を支払基金本部と国保連合会の両方に出す必要がありました。2024年度の移行時の届出期限は2024年2月29日です。
この届出を出したあとも、次のような変化があれば請求方法を見直すことになります。
- 常勤医が交代し、類型2の生年月日の条件から外れた
- レセコンや電子カルテを導入し、類型1から外れた
- 診療所を承継し、開設者が変わった
承継のときは、前の開設者の届出がそのまま引き継がれると考えないでください。開設者が変われば保険医療機関の指定も取り直すので、請求方法も新しく確認するのが安全です。
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紙レセプトの提出方法|送付先・期限・添える書類
紙で請求するときの流れは、オンライン請求と同じく「月末で締め、翌月10日までに審査支払機関へ出す」です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 提出先 | 社会保険(協会けんぽ・健保組合・共済など)の分は支払基金、国民健康保険・後期高齢者医療の分は国保連合会 |
| 提出期限 | 診療月の翌月10日まで |
| 出し方 | 郵送または窓口への持参(受付方法は都道府県ごとの案内に従う) |
| 添える書類 | 診療報酬請求書(いわゆる総括表)と、診療報酬明細書の束 |
紙レセプトは、保険の種類ごとに分けて提出先を変えます。公費の単独レセプトや、保険と公費の併用レセプトの振り分けも、支払基金・国保連合会の案内に従います。
期限の数え方や、10日が土日祝日に当たるときの扱いは、別記事のレセプト請求の期限はいつまで?で整理しています。
紙で出すときに査定・返戻を招きやすいのは次のような点です。
- 手書きの数字が読み取りにくい(特に1と7、0と6)
- 摘要欄に書くべきコメントが抜けている
- 公費の負担者番号・受給者番号の書き写し間違い
摘要欄の位置や書き方はレセプトの摘要欄はどこ?、公費の番号は公費の受給者番号の見方にまとめています。
紙レセプトからオンライン請求へ移る段取り
類型から外れた、または院内の負担を減らしたい場合は、オンライン請求へ移ります。厚生労働省の案内では、オンライン請求を始めるには開始したい月の2月前の20日までに、医療機関等向け総合ポータルサイトから利用申請などを済ませる必要があります。
| 順番 | やること | 目安 |
|---|---|---|
| 1 | レセコン(または電子カルテのレセプト機能)を決める | 開始の4〜6か月前 |
| 2 | オンライン請求の回線と端末を用意する(オンライン資格確認の回線を使える場合が多い) | 開始の3か月前 |
| 3 | 医療機関等向け総合ポータルサイトで利用申請・電子証明書の申請 | 開始月の2月前の20日まで |
| 4 | 試験的な送信で、エラーの出方を確かめる | 開始の前月 |
| 5 | 本番の請求を始める。最初の月は紙の控えと照らし合わせる | 開始月の10日まで(前月の診療分) |
手書きからいきなり移る場合、つまずくのは「病名と診療行為の対応」と「コメントの入れ方」です。紙では余白に書けたことも、電子レセプトではコメントコードや所定の欄に入れる必要があります。最初の1〜2か月は返戻が増える前提で、確認の時間を確保しておくと慌てずに済みます。
紙レセプトを続けるか移るかの境界
紙で続けられる医療機関でも、続けるのが得とは限りません。
| 自院の状況 | 向いている選択 |
|---|---|
| 類型に当てはまり、レセプト件数が少なく、近いうちに閉院・承継の予定がある | 紙のまま続ける |
| 類型に当てはまるが、承継の予定があり、後継者は若い医師 | 承継の前にオンライン請求へ移る |
| 類型から外れた、または外れそう | オンライン請求へ移る(前の「個別の例外」の節に当たらない限り) |
| 類型に当てはまるが、手書きの点検に毎月丸1日以上かかっている | 移ったほうが手間は減る |
承継を控えている診療所は、請求方法の切り替えも引き継ぎ作業に入れておくと、開設者の交代と同時にレセプトが止まる事態を防げます。
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よくある質問
光ディスクで請求していた場合はどうなりますか
光ディスク等で請求していた医療機関は、2024年9月末までにオンライン請求へ移れない場合、猶予届出と移行計画の提出が必要でした。いまも光ディスクで出している場合は、届出の有無を支払基金・国保連合会に確認してください。
紙レセプトの様式はどこで手に入りますか
診療報酬請求書・明細書の様式は省令で定められています。用紙の入手方法は都道府県ごとに違うため、支払基金・国保連合会の案内を確認してください。
紙で出していても、返戻は紙で戻ってきますか
紙で請求した分は、返戻も紙で戻るのが一般的です。再請求は返戻されたレセプトを直して、翌月以降の請求と一緒に出します。
まとめ
2024年4月以降、紙レセプトで請求できるのは、原則として手書き請求か高齢の常勤医師等という類型に当てはまり、猶予届出を出した医療機関です。回線の障害や1年以内の廃止・休止の計画など、個別に認められる例外もあります。類型から外れたら、開始月の2月前の20日までに利用申請を済ませ、オンライン請求へ移ります。承継を控えているなら、引き継ぎの前に切り替えておくのが安全です。
参考
- 厚生労働省保険局長通知(保発1226第4号)「療養の給付及び公費負担医療に関する費用の請求に関する命令の一部改正に伴う実施上の留意事項について」 https://kouseikyoku.mhlw.go.jp/shikoku/000431176.pdf
- 厚生労働省「現在、光ディスク等や紙レセプトで請求を行っている医療機関・薬局の皆さまへ」(別添5) https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001185175.pdf
- 社会保険診療報酬支払基金 https://www.ssk.or.jp/
特徴
対象規模
オプション機能
提供形態
診療科目
この記事は、2026年10月時点の情報を元に作成しています。
